コラム
保育士の離職率は高い?「離職率が低くて働きやすい職場」を選ぶポイント


保育士を目指す人は多いですが、就職してからすぐに辞めてしまう人も少なくありません。最近では、保育士不足が社会問題となっています。これから保育士を目指す人や、保育士として長く働いていきたい人は「離職率が低くて働きやすい職場」を選ぶことが大切です。
保育士の離職率についてと、働きやすい職場を選ぶときのポイントを紹介します。保育園選びの参考にしてみてください。
目次
保育士の離職率は高い?
厚生労働省が実施した、平成28年及び平成29年社会福祉施設等調査によると、保育士の離職率は9.3%です。公立保育園は5.9%、私立保育園は10.7%と離職率に大きな差があることがわかります。
正社員として働く保育士の経験年数は、約4割が6年未満となっていて、早期退職の傾向にあることがわかります。また、私立保育園の方が早期退職者が多く、公立保育園で働いている人ほど長く勤めていることがわかります。
全体 | 公立保育園 | 私立保育園 | |
2年未満 | 15.5% | 10.8% | 17.9% |
2〜4年未満 | 13.3% | 10.3% | 14.9% |
4〜6年未満 | 11.1% | 9.4% | 12.0% |
6〜8年未満 | 9.5% | 8.0% | 10.2% |
8〜10年未満 | 7.9% | 6.8% | 8.5% |
10〜12年未満 | 6.7% | 6.1% | 7.1% |
12〜14年未満 | 5.8% | 6.0% | 5.8% |
14年以上 | 30.1% | 42.7% | 23.6% |
産業別の離職率を見ると、保育が含まれる医療・福祉は8.8%です。保育士の離職率は極端に高いわけではありません。
業種 | 離職率 |
宿泊業、飲食サービス業 | 15.3% |
教育、学習支援業 | 12.2% |
サービス業 | 11.0% |
生活関連サービス、娯楽業 | 10.2% |
医療、福祉 | 8.8% |
製造業 | 5.1% |
建設業 | 4.8% |
保育士が離職してしまう原因
産業別の離職率と比べると、保育士の離職率が極端に高いわけではありません。しかし、待機児童が問題になっている原因のひとつが保育士不足であり、保育士の離職率に注目が高まっています。保育士が離職してしまう原因を紹介します。
給料が低い
保育士の給料は、他の職種に比べて低い傾向です。全職種平均年収と比べると、約150万円の差があることがわかります。
全職種平均年収 500.7万円
保育士平均年収 363.5万円
公立保育園の場合は、公務員なので経験年数を重ねるごとに昇給が見込めますが、私立保育園の場合は、役職や昇給があまり見込めません。また、仕事量に対して給料が見合っていないことも、保育士離れにつながる原因になっています。
人手不足で仕事量が多い
日々の保育、書類作成、掲示物作成、行事の準備、保護者対応、会議や研修など、保育士はたくさんの仕事があります。
日中は子どもを保育して、事務作業などは午睡中か勤務後に行います。研修や会議は、保育士全員が集まれる休日に行うことも少なくありません。
また、保育士が少ないと一人あたりの仕事量が増えるのでなかなか終わらず、持ち帰って仕事をする人もいるでしょう。仕事量が多く、プライベートな時間が取れないことが、離職する原因になっています。
労働時間が長い
保育士の労働時間が長いといわれる理由は、サービス残業の多さにあります。勤務時間は労働基準法通り設定されていますが、時間通りに退勤できないのが現状です。
正社員の場合はシフトでの勤務になります。早番で勤務が終わっても、保護者対応や事務作業のため、なかなか帰れないことは少なくありません。また、保育士が不足していると、子どもの人数に対して保育士が足りなくなってしまうため、残業せざるを得なくなります。
事務作業は、午睡中など保育していない時間を見つけて行う必要があります。そのため、終わらなかった仕事を持ち帰ってやることも珍しくありません。労働時間が長く、なかなか休む時間が取れないことが離職してしまう原因のひとつといえるでしょう。
仕事の責任が重い
保育士は、子どもの命を預かる仕事です。そのため、日頃からさまざまなことに気を配る必要があります。
例えば、食物アレルギーのある子どもには、アレルギー対応食を配膳します。複数いる場合は、誰がどのアレルギーなのかを把握しておかなければなりません。もしもアレルギー反応が出てしまったときは、迅速な対応が求められるでしょう。
他にも、体調不良、事故や怪我などが起これば、臨機応変に対応しなければなりません。また、最近ではモンスターペアレントと呼ばれる保護者から、理不尽なクレームを言われることもあります。
子どもの命を預かるという責任の重さに耐えきれず、保育士を辞めてしまう人が多くなっています。
人間関係のいざこざ
人間関係は保育士に限らず、どこの職場においても大切です。保育現場の場合、保育士同士の人間関係が悪いと情報の共有や伝達がしにくく、日々の保育に支障が出てしまいます。
男性保育士が増えてきたとはいえ、女性中心の職場なので、人間関係のいざこざが起こりやすいでしょう。保育園という閉ざされた空間で人間関係が悪化すると、働きづらくなってしまいます。
また、保護者との人間関係に悩む保育士も少なくありません。なかなか信頼関係が築けなかったり、理不尽なクレームの対応をしたりと悩みはつきません。
「子どもが好き」という理由だけでは乗り越えられないほど人間関係に疲れ、環境を変えるために離職する人が多くなっています。
保育方針が合わない
保育士は「こんな保育がしたい」という自分の保育像を持っている人がほとんどです。そのため、保育士が求める保育と園の方針が合っていない場合は働きづらさを感じるでしょう。
私立保育園の場合、園ごとに保育方針としてそれぞれ特徴を持っています。そこで働く保育士は園の方針に沿って保育をし、保護者は方針に沿った保育を求めているため「このやり方はよくない」と思っても変えることは難しいでしょう。
自分の保育に対する思いを伝えられなかったり、実現したい保育ができなかったりすると、モヤモヤしてしまいます。保育方針が合わないために、自分がやりたい保育ができる園への転職を考える人は少なくありません。
腰痛がつらい
腰痛は保育士の職業病ともいわれるほど、悩んでいる人がたくさんいます。子どもの抱っこやおんぶ、子どもと目線を合わせるために前かがみになったりしゃがんだりと腰に負担がかかります。腰痛がひどくなると、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアになり、日常生活に支障が出てしまうでしょう。
乳児クラスの場合、子どもの抱っこやおんぶは避けられません。病院や整体で治療しながら仕事をする人もいますが、子どもとの関わりは避けられないため、完治するのに時間がかかります。そのため、腰痛がつらくて保育士を続けられず退職を選ぶ人も少なくありません。
離職率の低い保育園を選ぶポイント
離職率が低いということは、働きやすい環境であるということです。長く働き続けるために、離職率の低い保育園を選ぶポイントを紹介します。
給料が安定している
保育士は他の職種に比べて、給料が低い傾向にあります。そのため、基本給に加えて賞与や残業代、手当が充実している園を選びましょう。賞与は、4ヵ月以上の支給を基準に選ぶのがおすすめです。給料が安定していると仕事へのモチベーションが上がります。
福利厚生が充実している
働く上で福利厚生が充実しているかは重要なポイントです。中でも、長く働くうえで重視したいのが、産休育休の取得率です。
産休育休の制度があっても取得できなければ意味がありません。そのため、必ず取得率を確認しましょう。産休育休が取得できれば、妊娠と出産を経て、長く働くことが可能になります。
また、一人暮らしをしている人は住宅手当があると安心です。毎月の家賃は、決して安くありません。手当が支給されれば、生活に余裕が生まれるでしょう。
保育士の人数に余裕がある
保育士の人数に余裕がないと、一人あたりの仕事量が多くなります。そのため、保育士の人数に余裕のある園を選ぶことが大切です。
保育士の人数が多いと、ゆとりを持って保育ができます。子どもひとりひとりに対して、きめ細かい対応も可能です。保育を交代で行えば、書類関係の仕事を勤務時間内に取り組むこともできます。
園見学や面接のときに、保育士の人数や働いている様子を確認すると良いでしょう。
残業や持ち帰りの仕事が少ない
保育士が離職する大きな原因は、残業や持ち帰りの仕事が多いことです。プライベートな時間を確保できず、疲れ果ててしまいます。
最近では、保育士の働き方が見直されており、残業や持ち帰りの仕事を減らす園が増えてきています。例えば、ICTシステムを導入することで書類関係を効率化することが可能です。書類は手書きという風潮がある中、ICTシステムを使うことで保育士の負担を減らしています。
さまざまな工夫によって、残業や持ち帰りの仕事を減らそうと努力している園を選ぶと働きやすいでしょう。
人間関係が良好
長く働くうえで、人間関係が良いかどうかは重要なポイントです。保育は一人ではなく、チームで行います。そのため、保育士の人間関係が良いと、より良い保育ができるでしょう。
「保育士の人数に余裕がある」「福利厚生が充実している」園であれば満足度が高く、人間関係も良好な傾向にあります。また、保育士ひとりひとりが意見を伝えやすい風通しの良い環境であることも、良好な人間関係を作るうえで大切です。
子育てに寛容
保育士を大切にしている園は、子育てに寛容です。子育てをしながら働く保育士が多いということは、産休育休がとりやすい環境ともいえます。保育士は女性がほとんどなので、産休育休がとれないと保育士不足につながる原因になってしまうでしょう。
子育て中は、子どもの病気や行事で早退したり欠勤したりすることが少なくありません。子育てに理解がない園だと、子どもの病気で休むたびに「また仕事を休まないと・・・」という罪悪感から、仕事がしづらくなってしまいます。一方で、子育て中の保育士が多いと、休んでしまっても「お互いさま」と助け合えるでしょう。
子育てに寛容な園は雰囲気がよく、保育士の人数にも余裕があるので安心して働けます。
休みがとりやすい、有給消化率が高い
休みたいときに休める環境であるかは、働くうえで重要なポイントです。有給休暇の取得は法律で定められていますが、保育士不足であったり、暗黙のルールで休めなかったりと自由に有給休暇が使えないこともあります。
そのため、有給消化率が高い園を選ぶことが大切です。プライベートな時間が充実していると、仕事のモチベーションも上がります。
年間休日120日以上あると、週に2日の休みと国民の祝日が休みになるので働きやすいでしょう。
保育方針が自分と合っている
自分の思い描く保育をしたい場合、保育方針が大切になります。福利厚生が充実していても、保育方針が合わないと働きづらく感じるでしょう。
例えば「のびのびとした環境で子どもの個性を伸ばしたい」と考えていたのに、早期教育に力を入れていて、カリキュラムが細かく決まっている園だと、思い描いていた保育とは異なってしまいます。
面接を受ける前に、園のホームページを見たり、園を見学したりして、情報を収集しておくことが大切です。
離職率の低い保育園を効率よく探すためには?
「自分に合った園に転職したいけれど、探す時間がない」「転職したいけど何をしたらよいかわからない」という人は、転職サイトを活用するのがおすすめです。
保育士専門の転職サイトなら、条件をしぼって自分に合った園を探せます。また、エージェントに相談すれば、条件に合った求人の提案、面接の日程を調整してくれます。
面接するうえで重要な、履歴書や職務経歴書の書き方の相談にものってくれるので、転職に不安を抱えている人でも安心です。
転職したいけれど時間がない人や、何からしたらよいかわからない人は転職サイトを活用しましょう。
まとめ
保育士の離職率は産業別に見ると、極端に高いわけではありません。しかし、保育士の人手不足はなかなか解消されていないのが現状です。
保育士として長く働くためには「離職率の低い働きやすい保育園」を選ぶ必要があります。「福利厚生が充実しているか」「人間関係が良好か」など、事前に情報集めてチェックしておくことが大切です。事前に園を見学しておくと、直接確認できるので安心できるでしょう。