コラム
保育士にスキルアップは必要?おすすめの資格も合わせて紹介
保育士としてスキルアップのために、資格取得を考える方は多いのではないでしょうか?
「給料が低い!資格をとって給料をあげたい!」
「保育士として仕事の幅を広げたい!」
「子供ともっと上手に関われるようになりたい!」
などさまざまな理由があると思います。
今回はそんなスキルアップを考えている方に向けて
おすすめの資格と、スキルアップの際に注意した方がいいことをお伝えしたいと思います。単に資格を取得するだけでは、キャリアアップは図れません。
この記事を参考に自分のキャリアの方向性を定め、興味のある資格を見つけてみてください。
保育士にスキルアップが必要な理由
共働き家庭が増え、待機児童問題が深刻化、保育士不足が騒がれている現在の日本では保育士へのニーズが多様化し、保育のスタイル・形態も日々進化しています。
1日のうち、家族以上に多くの時間を過ごすことになる保育士は、子供が健康に成長していく中で非常に大切な役割を担っています。
保育士には安全に預かるのはもちろんのこと、子供たちが心身ともに健康に育っていけるよう保育をする必要があるため、幅広い分野の知識やスキルが求められます。
そんな多くを求められる保育士ですが、現在は人手不足という大きな問題を抱えています。その理由の一つとして挙げられるのが「賃金問題」でしょう。
そういった賃金格差を解消するために、2017年に厚生労働省は保育士のキャリアアップを支援するため「保育士等キャリアアップ研修制度」を制定しました。
保育士等キャリアアップ研修制度で、何が変わる?
この制度では、一般保育士や主任保育士の間にさまざまな役職を追加しています。
・職務分野別リーダー(若手リーダー)
・副主任保育士(中核リーダー)
・専門リーダー
「職務分野別リーダー」は月額5000円、「副主任保育士」「専門リーダー」は月額4万円の処遇手当の対象となります。そのため保育知識以外のスキルアップが必要です。
上記の役職に就くには、基本的な保育知識を身につけることに加えて、都道府県が指定する専門分野に関する「保育士等キャリアアップ研修」を受けることが条件とされています。
例えば、職務分野別リーダーで終了認定を受ける研修分野は以下の6つです。
①乳児保育
②幼児教育
③障害児保育
④食育・アレルギー
⑤保険衛生・安全対策
⑥保護者支援・子育て支援
副主任保育士になるには、職務分野別リーダーを経験し上記の3つ以上の分野に加えてマネジメント研修をクリアする必要があります。
専門リーダーも同様に、職務分野別リーダーを経験し上記の4つ以上の分野の研修をする必要があります。
参考:
このように待機児童問題が深刻化、保育士不足を解決するために、厚生労働省を中心に動き始めています。
ニーズの多様化に合わせ、多様な価値観の保育園が増えてきている中で、保育士にもそれに見合ったスキルアップが必要になってきています。
今までの保育士は、ある程度の決まったことができるだけで昇給が保障されていました。
ですが、これから保育の形がますます変わっていくことを考えると、自分の得意分野を伸ばしていない、スキルアップをしていない保育士は昇給していく可能性は非常に低いと言えます。
またスキルアップをして給料アップを目指すために必要なことについては下記にまとめました。よければ合わせてご覧ください。
スキルアップするメリット
保育士がスキルアップをするメリットは、昇給以外にも以下のようなメリットがあります。
保育の専門知識を高められる
保育士研修では、乳児保育や障害者保育、食育・アレルギー対応など、保育の専門知識を高めることができる研修が設けられています。
保育に対する理解を深めるだけでなく、自分自身の興味のある分野を見つけることで、専門知識を高めるきっかけを掴むことが出来ます。
モチベーションアップに繋がる
仕事のストレスは「出来ない」や「わからない」という感情から来るものです。
スキルアップをすることで、仕事に前向きになることができ、保育に対するモチベーションもアップします。
転職の際、自己PRに繋がる
研修を終了した際には「修了証」が発行されるため、求人に応募する際に必要な条件を満たしていることを証明することが出来ます。
「自分は頑張ってきた」という主観的な意見を述べるだけでなく、修了証などの客観的な証明があることで、転職でアドバンテージを得ることが出来ます。
専門性を磨き、自分の強みを伸ばすことは、自分の仕事に自信を持たせてくれます。
資格取得の注意点
「スキルアップをする」=「資格を取得する」と考える方は非常に多いのではないでしょうか?
確かに、資格を取得することで専門性が高まり、スキルアップに繋がっていくことは間違いありません。ですが、あくまで資格取得は手段であり目的ではありません。
つまり、資格を取得しただけでは何も得られないということです。
ここをわかっていなければ、資格をたくさん持っている「資格コレクター」になってしまいます。
スキルアップの目的は、自分自身のキャリアアップです。
・子供の話を聞いてあげられる保育士になりたい
・子供の健康を守ってあげられる保育士になりたい
・子供と一緒に遊ぶプロフェッショナルになりたい
自分自身が成長していきたい方向性を定め、そこに向けて必要な資格を取得し、スキルアップを図っていきましょう。
キャリアの方向性別|おすすめ資格
ここからは、キャリアアップの方向性や目的別に、おすすめの資格を紹介していきたいと思います。
子供自身の悩みや、育児の悩みを解決できるプロになりたい
臨床心理士
臨床心理士とは、臨床心理学に基づく知識や技術を用いて、人間の心の問題にアプローチする「心の専門家」です。その人自身の多種多様な価値観を尊重しつつ、その人自身の自己実現をお手伝いすることが出来ます。
民間資格ですが、心理関係の資格の中では最も高い知名度と信頼性を持っています。
<保育の現場でどう役立つ?>
子供たちは大人ほど自分自身の感情をコントロールすることが出来ません。
ストレスを感じた際、発散の仕方がわからずに物に当たってしまい、周りを怪我させてしまったり、逆に塞ぎ込んで心の健康を害してしまう子もいます。
そういった子の話をカウンセラーとして聞いてあげることで、子供たちの心理的問題解決のサポートをしてあげるのです。子供たちも距離が近すぎて、親に話せない悩みなどを抱えています。そういった悩みや心の問題を、そばで見守る臨床心理士の資格を持った保育士が手助けできることには、非常に大きな意味があります。
子供たちの考えを整理し、自ら解決できるようにサポートしていくことで、自立を促すことにも繋がっていきます。
<資格の取得方法>
臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格することが必須条件となります。
主な受験資格としては以下のように定められています。
・指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している
・臨床心理養成に関する専門職大学院を修了している
・諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
・医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者
参考:http://fjcbcp.or.jp/rinshou/juken/
受験資格を得ることができれば、筆記試験、口述面接試験を受け、それに合格すれば認定されます。
チャイルドマインダー
チャイルドマインダーは家庭的保育のスペシャリストを認定する資格です。
少人数保育に特化した知識と技術を身につけることが出来ます。
<保育の現場でどう役立つ?>
近年、在宅型や訪問型のニーズが高まってきています。
そのため、チャイルドマインダーの資格を持っていれば在宅の保育にも対応することができるため、仕事の幅を広げることが出来ます。
<資格の取得方法>
① チャイルドマインダー養成講座を受講する
② 資格試験を受けて合格する
この2段階です。受講するには15万円ほどのお金がトータルでかかってきます。受講期間は長くて6ヶ月ほど、早くて3ヶ月が平均です。
育児セラピスト
育児の視点に立ち、子育てで悩む親の相談に乗ったり、保護者の心を癒すことができるようになる資格です。保護者に対して適切な育児知識を伝え、活かしてもらうことを目的とした資格です。
<保育の現場でどう役立つ?>
現代、母親たちはインターネットで簡単に情報を収集することが出来ます。
しかし、そこにはさまざまな教育法があり、「自分の子育てはあっているのか?」「本当にこれで子供が健やかに育つのか?」と不安を抱えながら育児をしている保護者は多いです。
子育て現場で働く保育士が同時に育児を学ぶことで、保護者の育児サポートをできるようになります。実践的に知識や情報を習得できる育児セラピストのニーズは高まってきています。
<資格の取得方法>
2日間の講座を受け、試験に合格すれば資格認定となります。
受講料は育児セラピスト2級が40,000円、1級が90,000円です。2級合格者のみが1級を受けることが出来ます。
子供の健康を守るプロになりたい
医療保育専門士
入院している子供の食事補助や着替えの手伝い、遊びや勉強のサポートなどが仕事内容に挙げられます。医師や看護師は、医療業務がメインとなるため、代わりに医療保育士が子供の入院生活のサポートや心のケアを行います。
<資格の取得方法>
・保育士資格を有していること
・病院、診療所、病児保育室、障害児施設、乳児院などで常勤1年以上
・または非常勤で年間150日間以上かつ2年以上の保育経験があること・日本医療保育学会の正会員であり、申し込み時に会員歴が1年以上あること
資格取得には実務経験が1年以上必要となるため、注意が必要です。
認定病児保育スペシャリスト
認定病児保育スペシャリストとは、病児専門の認定資格です。
主な役割は保育施設・病児保育施設などにおいて病気や体調不良の子供を看病することです。体調管理や服薬サポート、水分補給のサポートなどの幅広いケアを行います。
<資格の取得方法>
資格取得までの流れは以下の通りです。
① 全13回のWeb講座の受講
② 1次試験
③ 2次試験(認定試験)
④ 24時間以上の実習またはオンライン実習
高校を卒業した18歳以上の方が対象で、資格を取るまでにはトータルで7万円ほどかかります。
子供を楽しませられるプロになりたい
リトミック指導員
リトミック指導者とは子供たちに音楽を教える講師のことです。
リズム遊びや歌、ダンスなどの練習を通して、音楽への興味や関心、協調性と集中力を培うことを狙いとしています。資格認定団体は多数あります。
「音楽の楽しさをみんなに伝えたい!」という気持ちがある方は是非ともチャレンジしてみてください。
<資格の取得方法>
通信講座や国立音楽院、リトミック研究センターなどで取得できます。
本格的に資格を活用できる技術を身につけるまでには、2年ほどかかると言われています。
イングリッシュエキスパート保育士
イングリッシュエキスパート保育士は、子供たちや保護者との英語によるコミュニケーションを目的とする資格です。グローバル化が進む日本において、英語力の需要はさらに高まっています。インターナショナル系の保育園は比較的に高給与な園が多いため、
英語が好きでキャリアアップも考えている、という方はチャレンジしていただきたいです。
<資格の取得方法>
資格取得には「一般社団法人保育英語検定協会」が実施している認定試験に合格する必要があります。受験するのに特に必要な条件はありません。
絵本専門士
絵本専門士は、絵本に関する知識・読み聞かせなどの高い技術を備えた、絵本の専門家であることを証明する資格です。絵本は子供の言語力、理解力、感性の発達に繋がり、豊かな人格形成をサポートします。「子供に笑顔になってもらうことが好き!」という方は是非チャレンジしてみてください。
ですが、絵本に関する実務経験が原則3年以上必要になります。
そのため、資格を取るのは保育現場の経験を積んでからでも遅くはありません。
<資格の取得方法>
講座を全て終了すると、絵本専門士委員会によって絵本専門士に認定されます。
・子供や絵本に関連する資格を有する者
・絵本に関わる実務について、原則として3年以上の経験を有する者
・絵本に関わる活動に携わり、原則として3年以上の経験を有する者
・絵本学や児童文学、美術について研究実績を有する者
上記の受験資格を満たし、受験者として認められた場合、絵本専門士養成講座を受講することが出来ます。
参考:https://www.hoikushibank.com/column/post_1428
保育士の基本スキルを身につけよう
ここまでは、保育士がスキルアップをする際に、おすすめの資格を紹介してきました。
ですが保育士は、保育ができなければ仕事になりません。
保育を行う上での基本的なスキルを疎かにしては、キャリアアップは図れません。
ここでは最後に、保育士としてキャリアアップするために必要な基本スキルを紹介したいと思います。
それは以下の5つです。
・コミュニケーション能力
・健康管理能力
・気配り力
・論理的思考・行動力
・忍耐力
一つずつ見ていきましょう。
コミュニケーション能力
保育士には高いコミュニケーション能力が必要です。
それは前述の通り、保育士が良好な人間関係を築く必要があるのは子供だけでは無いからです。
保護者や上司はもちろんですが、近隣の地域住民の方々とのコミュニケーションも必須になってきます。
保護者の送迎マナーが悪かったり、子供達の遊び声がうるさいことで、地域住民の方々とトラブルになることが多々あります。
そういった際に、日常からしっかりとコミュニケーションを取っておくと、小さな火種で済ませる事ができるのです。
さらにここで覚えておきたいのが、人と話すことだけがコミュニケーション能力では無いということです。見落とされがちですが、連絡帳や書面などの文章を作成し、伝えることもコミュニケーション能力の一つです。
子供の成長や頑張ったことなどのポジティブな内容だけでなく、喧嘩して相手を傷つけてしまった事や、その上でご家庭で取り組んで欲しい課題など、誤解を生まないように伝えなければいけないこともあります。
そういった意味で保育士は、言葉を巧みに操る事ができなければできない仕事だという事がいえます。
健康管理能力
この力は、自分のためにも周りのためにも絶対に磨いておかなければいけない能力です。
体調がおかしいと感じたら、すぐに薬を飲んだり休んだりするなどの対処が必要です。
しかし、それ以上に体調を崩さない努力が必要だと言えます。
バランスの良い健康な食事を摂り、十分な睡眠をとる。
自分自身の心の健康も考え、趣味を持つなどして適度に息を抜くことも大切です。
保育士が管理しなければいけないのは、自分の健康だけではありません。
もし子供が「食欲がない」「いつまでも泣いている」など様子がおかしいことがあれば、原因を考えて、適切な処置をしてあげなければいけません。
保育園内だけの問題ではなく、自宅での食事、睡眠など保護者に問題がある場合は、勇気を出して指導してあげることも必要です。
気配り力
日常業務の中で
「やっておいた方がいいだろうけど、頼まれていないしやるのはめんどくさいな、」
と思うような出来事に出会うことってたくさんありますよね。
こういった小さな気づきを行動に起こせるかどうかが、保育士としてのレベルを決めます。
子供と遊ぶといっても、単に楽しく過ごせば良いというわけではありません。
遊んでいる最中も危ない目に合わないように、目を光らせていなければなりません。
事前に危ない目に遭いそうな所を取り除く、などの気配りが保育士には必須なのです。
先輩の保育士である上司は仕事の量が新人保育士と比べると、比較的多い傾向にあります。
新人保育士は上司に対しての配慮も忘れてはいけません。
指示を受ける前にやっておいて欲しいであろうことを先読みし、行動に移す。
そうすることによって上司の負担が減り、現場が円滑に回りやすくなります。
そういった日常の気づきを行動に移す、気配り力が保育仕事には必須な能力なのです。
論理的思考・行動力
何か問題が起きた際に、その解決策を論理的に考え行動に移せる事が保育士にとっては重要な能力になります。
仕事ができない保育士は、頭の中がまとまっておらず、何が言いたいのかもわからないような人が多い傾向にあります。それは、物事を分解し、順序立てて組み立てていく論理的思考能力が無いせいです。
仕事ができる保育士は、この能力があるため行動に無駄がなく、容量が良いためたくさんの業務をこなす事ができます。上司に対しての相談でも、何を聞きたいのか?質問の背景が明確なため、的確なアドバイスがしやすいのです。
論理的思考力は、日常業務の中で考えながら行動することで、身につけることができます。
今はその力が無いとしても、焦らず時間をかけて身につけていきましょう。
忍耐力
忍耐力とは、辛いことや苦しいことを耐え忍ぶ力のことを指します。
「子供が好き!」という思いから志した保育士という仕事でも、日々の業務をこなしていくうちに必ず苦しいことや辛いことに出くわします。
・子供が言うことを聞いてくれない
・保護者のクレームでメンタルが崩壊寸前
・上司に全く評価されずに、自分に自信がなくなってきた
・事務作業が多く、終わらない
・自分の仕事と給料が見合っていない
など、悩みが尽きることはありません。
そういった際に、悩みから逃げるのではなく、悩みに立ち向かう忍耐力が必要なのです。単に悩みやストレスを耐え忍ぶだけが忍耐ではありません。その悩みに打ち勝つために考え、試行錯誤し、行動をし続けることが何よりも大切です。
そういったトライアンドエラーを何度でもできる、精神力が保育士には必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
現代の日本では、保育士にたくさんのことが求められており
スキルアップは必須です。
ですが、資格を取得することは目的ではなく手段です。
自分の目的に合った資格を選び、自分のキャリアアップを考えてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。