コラム
保育士の職業病「腰痛」に悩まないで!原因と予防方法を紹介


腰痛は保育士の職業病といわれるほど、悩んでいる人がたくさんいます。
毎日子どもを抱っこしたり、重いものを運んだりと保育士の仕事は体力勝負です。腰が痛いのを我慢していると、どんどん悪化して慢性化してしまいます。
腰痛が悪化すると、ギックリ腰や椎間板ヘルニアなど日常生活に支障をきたす恐れがあるので、早急に対策が必要です。
保育士が腰痛になる原因と予防方法を紹介します。保育の仕事を長く続けるためにも、自分の身体を大切にしましょう。
保育士が腰痛になりやすい原因
腰痛に悩む保育士はたくさんいます。特に、乳児クラスの場合は子どもと関わる中で、無意識のうちに腰に負担がかかる姿勢になっている可能性があります。保育士は身体を動かす仕事がほとんどです。そのため、腰痛が悪化すると、毎日の仕事が苦痛に感じてしまうかもしれません。
保育士が腰痛になりやすい原因を紹介します。
子どもの抱っこやおんぶ
乳児クラスの場合、子どもの抱っこやおんぶは避けられません。6Kg〜10Kgほどある子どもの抱っこやおんぶは、保育士の腰に負担がかかります。
特に0歳児の場合、スキンシップ、ねかしつけ、散歩、外遊びなど日中のほとんどの時間を抱っこやおんぶで過ごすことは少なくありません。1人をおんぶ、1人を抱っこで2人同時に持ち上げることあります。
日々の抱っこやおんぶの積み重ねや、とっさに腕の力だけで持ち上げる行為が、腰痛を引き起こす原因になります。
トイレや着替えの介助
トイレや着替えの介助のときに腰に負担がかかります。
特におむつ替えは、1日に何度も行います。1人で複数の子どものおむつ替えをすることも珍しくありません。
・おむつのチェック
・おむつ台に子どもを乗せる
・おむつ交換する
・おむつ台からおろす
しゃがむ、抱っこする、前かがみになるなど、さまざまな姿勢が腰痛の原因になっています。
特に前かがみは、椎間板ヘルニアになってしまう可能性もあるので注意が必要です。
また、まだお座りができない赤ちゃんの着替えは、赤ちゃんを仰向けに寝かせて着替えさせるために前かがみになります。ベビーベッドなどを活用して、高さを調整するとよいでしょう。
食事の介助
昼食やおやつの時間は、保育士1人で複数の子どもの食事介助をします。
そのため、複数の子どもを見るために腰をひねったり、落ちたものを拾って前かがみになったりと腰に負担がかかります。
食事介助のときは、机の配置を工夫してみましょう。なるべく腰をひねらず、楽な姿勢でできるようにすることが大切です。
授乳
0歳児クラスの場合は、保育士が1日に数回授乳します。授乳は猫背になりやすいので注意が必要です。猫背が続くと腰痛の原因になります。
授乳は、背もたれがあるところに座って行いましょう。背もたれがないときは、背筋を伸ばすことを意識します。
タオルや授乳クッションで赤ちゃんを支える腕をサポートするのもおすすめです。身体に負担がかからないように、楽な姿勢で授乳できるように工夫しましょう。
子ども目線に合わせた関わり
「先生見て!」と子どもに声をかけられたとき、子どもと目線を合わせるために無意識に前かがみになっていませんか?
保育士は、たくさんの子どもと関わるので、その分前かがみになる回数も増えます。日々の子どもたちとの関わり方が腰痛の原因になりかねません。
子どもと目線を合わせるときは前かがみではなく、しゃがむようにします。そうすることで腰への負担が軽減できるでしょう。
テーブルや遊具など重いものを運ぶ
テーブルを運んだり、三輪車などの重い遊具を運んだりすると、腰に負担がかかります。重いものを頻繁に持ち上げると、椎間板に圧力がかかって、腰痛やギックリ腰の原因になりかねません。
重いものを運ぶときは、一度しゃがんでから身体全体で持ち上げることが大切です。とはいえ、子どもを見ながらだと、ついつい立ったまま重いものを運んでしまうことも少なくありません。ひとりですべて運ぼうとせず、周りの人と協力することで、腰への負担が減らせるでしょう。
事務作業のときの姿勢
事務作業するときに子ども用のテーブルや椅子を使っていませんか?子ども用のテーブルや椅子を使っていると猫背になり、腰痛の原因になります。
事務作業は、午睡のときに行うことがほとんどです。午睡している子どもを見ながら行うため、思わず近くにある子ども用のテーブルや椅子を使ってしまいがちです。しかし、腰に負担をかけているため、避けたほうがよいでしょう。
保育士ができる腰痛予防の方法
毎日子どもと関わっていると、無意識のうちに腰に負担をかけています。
腰痛にならないためには、しっかり予防することが大切です。保育士ができる腰痛予防の方法を紹介します。
抱っこの方法を工夫する
子どもを抱っこするときは、腕の力だけでなく、身体全体を使うようにします。
なるべく子どもを自分の近くに引き寄せてから持ち上げるように意識しましょう。
少し膝を緩めてお腹を引っ込め、腰を引くように抱っこします。
腰を前に突き出して立たないように注意しましょう。腰を前に突き出すようにすると楽に立てるように感じますが、腰に負担がかかっています。
また、乳児クラスには抱っこひもやおんぶひもが用意されています。寝かしつけや散歩などで長時間の抱っこが必要な場合は、抱っこひもやおんぶひもを上手く活用することで腰への負担を軽減できるでしょう。
腰に負担がかからない姿勢を意識する
日頃から、なるべく腰に負担がかからない姿勢を意識することが大切です。
・座り方は正座か立て膝
・背中は丸めずまっすぐにする
・中腰ではなく座って対応する
あぐらや横座りなど、どちらか一方に体重がかたよると腰に負担がかかります。なるべく正座か立て膝で体重がかたよらないようにすることが大切です。また、前かがみや猫背になってしまったときは、身体をそらしてから背筋を伸ばすように意識しましょう。
事務作業は大人用デスクを使う
事務作業するときは、大人用のテーブルと椅子を使用します。他の保育士に声をかけて、職員室や事務所で作業するのが良いでしょう。座るときは脚を組んだり、前かがみになったりしないように注意します。
また、どうしても子ども用のテーブルと椅子を使用する場合は、姿勢に気をつけます。猫背にならないように椅子は使わず、クッションや敷物の上に座って、なるべく背筋を伸ばすように意識することが大切です。
こまめなストレッチ
腰痛予防には、こまめなストレッチがおすすめです。ストレッチは、血流を良くして、筋肉を柔らかくしてくれます。また、骨盤や股関節の歪みを修正し、疲労改善やリラックス効果が期待できます。
腰痛予防には腰回りだけでなく、お腹、股関節、太ももの筋肉も含めて行うと、より効果的です。
ストレッチするときは、少しずつ、ゆっくり筋肉を動かすことを意識しましょう。また、痛いのに無理に伸ばしたり引っ張ったりしないように注意します。1日10分など短時間でいいので、毎日続けることが大切です。
簡単にできる腰痛予防ストレッチ
誰でも簡単にできる腰痛予防のストレッチを紹介します。自宅や仕事の合間に筋肉をほぐして、腰痛にならないようにしましょう。
腰を伸ばすストレッチ
1、うつ伏せになり、両肘を立てる
2、ゆっくと肘を伸ばして身体を持ち上げる
3、天井を見上げて5秒キープする
4、ゆっくりとうつ伏せに戻る
腰回りの筋肉を伸ばすストレッチ
1、仰向けになり、左足の上に右足を乗せて、腰をひねる
2、右膝に左手を添え、右手を耳の横で伸ばす
3、右側に首を曲げて20秒キープする
4、ゆっくりと仰向けに戻る
5、反対側も同様に行う
太ももやお尻を伸ばすストレッチ
1、床に座り、右の太ももに左足を乗せる
2、背筋を伸ばして20秒キープする
3、ゆっくりと元に戻り、反対側も同様に行う
股関節を柔らかくするストレッチ
1、肩幅より大きく脚を開く
2、つま先を外側に向ける
3、まっすぐ腰を落とし、太ももの内側に手を添える
4、右肩を内側に入れ、右手は太ももを外側に押すイメージで股関節を伸ばす
5、10秒キープする
6、反対側も同様に行う
腰痛を感じたときの対処法
腰痛を感じたら早めの対応が必要です。腰痛が悪化すると、ギックリ腰や椎間板ヘルニアなど日常生活に支障をきたす恐れがあります。「保育の仕事は楽しいけれど、腰痛がつらい」といった状況にならないためにも、無理せず、身体を労るようにしましょう。
病院や整体に通う
腰痛を感じたら、整形外科・整骨院・整体院のいずれかに通って改善しましょう。
整骨院は、腰痛の改善や完治を目的に柔道整復師という国家資格を持った人が施術します。整体院は、関節のズレや歪み、筋肉をほぐすことによる血行促進、疲労回復を目的にしています。軽い腰痛であれば、整骨院や整体院に行って施術を受けるのがおすすめです。
整形外科は、レントゲン検査で骨に異常がないかを診察します。そのため、今までに感じたことのないひどい痛みを感じるときは整形外科に行くとよいでしょう。
腰痛ベルトや湿布を使う
「病院や整体に行っている時間がない」という人は、腰痛ベルトや湿布を使って痛みを和らげましょう。
急な腰痛には冷たい湿布、慢性的な腰痛には血行促進のため温かい湿布を貼ります。痛いところだけでなく、周りを囲うように貼るとより効果的です。
腰痛ベルトは、姿勢のサポートや保温効果が期待できます。ただし、夏の暑い時期に腰痛ベルトを巻くと、暑くて体調を崩す恐れがあるので注意しましょう。
湿布や腰痛ベルトは痛みの軽減は期待できますが、根本的な解決になりません。あくまでサポートなので、病院や整体で施術を受けて治すことが大切です。
腰痛が治るまで幼児クラスを担当する
乳児クラスを担当している場合、腰痛が治るまで幼児クラスを担当するのもひとつの方法です。
乳児クラスは抱っこやおんぶなど、腰への負担が避けられません。幼児クラスであれば、ある程度のことは子ども自身でできるので、腰への負担も軽減できるでしょう。
腰痛のつらさを一人で抱え込まず、上司や他の保育士に相談することが大切です。周りにサポートしてもらい、腰痛の悪化を防ぎましょう。
思い切って休む
腰が痛くて仕事ができない場合は、思い切って休むのもひとつの方法です。無理して仕事を続けると腰痛が悪化して、余計に仕事ができなくなってしまいます。
とはいえ「腰痛で休むなんて・・・」と後ろめたい気持ちになってしまう人も多いでしょう。保育士は子どもの安全を守らなければいけないので、素早い対応が必要です。体調が悪いままだと、とっさの対応ができない可能性があるので、周りの保育士に迷惑をかけてしまいます。
腰痛でつらいときは、病院や整体に行って治療に専念し、身体を休めることが大切です。腰痛が改善したら、休んだ分、熱心に仕事に取り組みましょう。
どうしても腰痛がつらければ転職という選択も
どうしても腰痛がつらくて仕事を続けられないと感じたら、転職するという選択も可能です。
保育士の資格やスキルがあれば、再就職先の選択肢がたくさんあります。
【保育士資格を活かして働ける場所の一例】
・ベビーシッター
・学童保育
・病児保育
・幼児教室
・子育て支援センター
腰への負担を考えて転職先を選びましょう。例えば、学童保育であれば子ども自身でできることが多くなるので、腰への負担を軽減できるかもしれません。子育て支援センターであれば、子どもよりも保護者との関わりがメインになります。コミュニケーションをとるのが得意な人に向いているでしょう。
また、病児保育もおすすめです。病児保育は病気になった子どもを保育するため、座って遊ぶことが多く、外で遊んだり散歩をしたりすることはほとんどありません。預かる子どもの人数も少ないので、保育園で働くより腰痛になりにくいでしょう。
保育士としてのキャリアが長いのであれば、思い切って園長や主任枠に挑戦するのもひとつの方法です。園全体に関わるため、腰への負担は少なく、キャリアアップにもつながります。
まとめ
腰痛は、保育士の職業病といわれるほど悩んでいる人がたくさんいます。
腰痛に悩まないためには、腰痛になる原因を知り、予防していくことが大切です。
もしも腰痛になってしまったら、病院や整体にいって早めに治療します。保育士の仕事を長く続けるためにも、自分の身体を大切にしましょう。