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開業時の資金調達が美容室の経営状態を決める?開業時に検討すべき融資や助成金とは?

美容室の開業を検討している美容師や経営者の方がまず気になることは、資金面(資金調達)についてではないでしょうか。美容室を開業するためには、どれくらいの費用が必要なのか、また自己資金が足りない場合は、どのようにして資金調達をすれば良いのか悩む方も多いはずです。 

そこで本記事では、美容室開業に必要な資金の目安を紹介した上で、開業資金が足りない場合は、どこから融資を受けることができるのかなどの資金調達の方法についてご紹介します。

美容室開業には1,000万円が必要!資金調達はどうする?

ビルと森を上空から撮影した写真

開業資金の内訳について

平成27年8月に日本政策金融公庫が公表している「サロン開業費用の内訳」によると、美容室を開業するためには、約1,000万円必要という調査結果が出ています。

また日本政策金融公庫「2014年度新規開業実態調査」の調査結果では、合計1,030万円の資金調達が必要という結果が出ていますが、実際にかかった費用は940万円ということも掲載されています。

開業資金の940万円の内訳はこちらです。

  • 内装工事 476万円
  • 美容器具・備品など 197万円
  • 運転資金 150万円
  • テナント賃借費用 104万円(家賃3ヶ月分も含む)
  • その他の費用 13万円

開業するための資金はギリギリではなく、少し余裕をもって1,000万円の資金調達を準備することで、経営していく上での金銭面の不安を解消してくれるでしょう。

資金調達の方法は大きく2つある

美容室を開業するための方法は、「融資を受ける方法」と「補助金や助成金を受け取る方法」の2種類があります。しかし、「融資と補助金・助成金の違いが分からない」という方もいるのではないでしょうか。そこで、ここからは融資と補助金・助成金の特徴や、返済の有無についてご紹介します。

融資を受ける方法

融資とは、資金調達が難しい経営者が、銀行や金融機関から資金を借りることです。返済義務があり、利息の支払いも発生します。 

「融資」はお金を借りるので「借金」というイメージがありますが、厳密には融資と借金は異なります。借金は生活費や洋服、車などを購入する「消費」を目的とした借り入れ。一方、融資は「事業で利益を生む」ための借り入れです。

「借金」という言葉のイメージから、なかには資金の借り入れを躊躇(ちゅうちょ)する方もいるかもしれません。しかし、事業の開業や存続、発展のための借り入れは、事業手段の一つです。有効に活用しましょう。 

融資を受けるには、さまざまな書類を用意する必要があります。特に事業計画書には、説得力のある事業内容をしっかり記載して、融資先の担当者に信用を得ることが重要です。

補助金や助成金を受ける方法

雇用関係の助成金は、「労働者が安定して働けること・労働者の雇用環境を良くすること」を目的として、厚生労働省から事業主などに支給されるものです。同じ意味合いとして補助金がありますが、補助金の管轄は経済産業省や中小企業庁になります。それぞれの補助金・助成金制度の要件を満たしていれば、給付金を受け取ることが可能となっています。融資とは異なり、補助金や助成金には返済の必要もありません。 

しかし、助成金の受給には比較的時間がかかるので、早急な資金調達が必要な方には向いていません。ちなみに、助成金の財源は雇用保険なので、雇用保険へ加入していることも受給条件となります。

助成金制度は、種類が多い上に制度の内容がよく変わります。使える助成金を自分だけで正しく把握するのは、難しいかもしれません。自治体独自の助成金などもあるので、開業すると決めた時点で管轄の行政に連絡してみると良いでしょう。

参考:事業主の方のための雇用関係助成金 厚生労働省
   

開業時は融資のチャンス!今後の美容室経営も考えた借り入れを 

メモとペンとお金が並んだ写真

美容室の融資を受ける先は、さまざまですが基本的に以下の方法が多いのではないでしょうか。

  • 日本政策金融公庫での借り入れ 
  • 銀行から融資を受ける
  • 親族からの借り入れ

親族などからお金を借りる場合、借り入れのタイミングは、親族と事業主の話し合いで決められますが「創業資金融資」や「開業資金融資」は、開業するタイミングでしか借りることができません。

開業のタイミングを逃してしまうと、運転資金として融資を受けるのは難しく、ノンバンクのビジネスローンなど、金利の高い融資しか受けることができないケースがほとんどです。 

したがって、親族から融資を受けられる場合でも、開業時には創業資金融資や開業資金融資など開業のタイミングでしか借り入れできない融資を利用し、親族からの借り入れ分は運転資金に回すなど、費用に関する計画をしっかり立てるのがポイントです。

日本政策金融公庫の開業資金融資を受ける

融資自体は検討しているが、美容室開業に必要な資金をどこの機関で借り入れるか悩む方も多いでしょう。そんな方は、まず政府が運営している金融機関であり、中小企業の支援を目的とした「日本政策金融公庫」での借り入れを考えましょう。

「日本政策金融公庫」の主な特徴はこちらの3つです。

  • 銀行と比較すると低金利
  • 長期返済のため、経営者側の負担が少ない
  • 助成金と違い、前払いだが審査が厳しい

日本政策金融公庫とは、国が新たに事業を始める方を対象に向けた融資なので、金利が低く、実績がなくても融資を受けやすいのが特徴です。

返済期間は他の金融機関と比べて、長く設定することが可能です。このため、ゆとりをもった返済計画を立てることができます。まずは、以下の公式サイトで詳細を調べてみましょう。そして、予約相談を使い、分からないことを積極的に質問しましょう。

一方で、日本政策金融公庫は、審査が厳しいという側面もあります。申請したからといって必ずしも融資を受けられるものではありません。しっかりとした美容室のコンセプトや事業計画書を用意して、審査に臨みましょう。

日本政策金融公庫の公式サイトはこちらです。

銀行から創業融資を受ける

日本政策金融公庫からの借り入れができなかった場合には、その他の金融機関からの融資を受ける必要があります。その際には、まず地方銀行や信用金庫を選びましょう。

地方や信用金庫は、主に小口の企業を取引先としていたり、地域発展を目標としていたりするので、創業時でも融資を受けられる可能性が高い傾向にあります。一方で都市銀行は、大口の企業取引をメインとしているケースが多いので、融資を受けるのは難しいかもしれません。 

銀行などの金融機関で融資を受ける際には、信用保証協会を付けると、融資を受けやすくなります。信用保証協会とは、中小企業・小規模事業者の資金繰りを円滑にするための機関です。銀行などの金融機関で申し込みができるので、創業融資を行っている金融機関に相談してみましょう。

信用保証協会(全国信用保証会連合会)の公式サイトはこちらです。

親族や友人からお金を借りる

親族からお金を借りる場合でも、「借用書の作成」や「返済の事実が証明できる方法での返済(銀行振込など)」などのルールがあります。形式に乗っ取った形で金銭賃借を行わなければ、贈与とみなされ110万円を超えた部分については贈与税の対象となってしまいます。

また、金銭の借入は相互の信頼関係によって成り立ちます。一度トラブルになると、元の良好な関係に戻るのは大変難しいものです。親しい仲だからこそ、資金の借り入れは慎重に行う必要があります。 

まずは、銀行や金融機関からお金を借りる場合と同様に、資金の使い道を明確に伝えるところから始めましょう。

美容室の資金調達に使える助成金をご紹介

スマホ2台とメモ帳が並んでいる写真

美容室を開業する時に助成金を受け取ることができたら、経営する上での金銭面に余裕ができるため、精神的にも安定します。しかし、各助成金を説明する前に注意点があります。

それは、「美容師だからといって特別に使える助成金はない」ということです。それを前提の上で、資金調達に使える助成金の種類について、ご紹介していきます。

個人事業主向けの助成金とは

美容室など個人事業主が使える助成金の中には、雇用関係の助成金があります。将来的に従業員を雇用しようと検討している経営者は、押さえておきましょう。雇用関係の助成金には、以下のようなものがあります。 

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

職業経験の少ない方や技術や技能が少ない求職者を、ハローワークの紹介により最長3ヵ月間トライアル(お試し)として雇用した場合に、事業主が受けることができる助成金です。雇用者1人に対して月4万円支給されます。

キャリアアップ助成金

既存の非正規従業員を正社員にすることでもらえる助成金です。従業員を雇うことで、さまざまな助成金を受給することができるので、ぜひ申請してみましょう。

ちなみに、個人で経営する美容室が使える助成金をインターネットで調べるなら、「個人事業 助成金」と検索すると良いでしょう。個人事業主向けの助成金には、開業資金を必要としている経営者が利用できるものもあります。 もしくはこちらの記事も参考にしてみてください。

その他の補助金について

助成金以外にも、助成金と同じく返金義務のない補助金制度というものがあります。美容室を経営していく上での補助金制度には、以下のようなものがあります。

  • ものづくり補助金
  • 小規模事業者持続化補助金 
  • 事業再構築補助金

補助金は助成金と同様に返済義務はありませんが、資金を受け取ることができるのは店舗の開業後だということ注意が必要です。急ぎで資金が必要な方には向いていません。申請できる補助金を積極的に利用して、事業を拡大していきましょう。

余裕を持った資金調達を行い、スムーズにオープン

開業というタイミングは、融資を受けたり、助成金・助成金を申請したりできるチャンスでもあります。自己資金にこだわってギリギリの資金調達をするのではなく、今後の運営を踏まえた余裕のある資金調達を行いましょう。 

まずは、融資や助成金を受けるために、美容室のコンセプトをしっかり考えて、事業計画書を作成し担当者の信頼を得ることがポイントです。 

お客様にどんどん喜ばれる美容室を目指していきましょう。

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