開業・独立

美容室開業時の事業計画書の書き方、アピールすべき3つのポイントをご紹介!

事業計画書は、美容室開業時に作成する書類の中でも特に重要な書類です。融資先は事業計画書を精査して、貸付金が滞りなく回収されるかどうかを判断して融資を決定します。

事業計画書の書き方のポイントは以下の3点です。

  • 美容室を開業する事業者の優位性
  • 資金調達方法の堅実性
  • 事業の見通しの裏付けとなる数値計画

これらのポイントを押さえて、融資先に事業計画を具体的に提示できれば、「この店は継続的で安定した経営が可能だろう」と判断されるでしょう。そうすれば、融資先の審査を通過できる可能性が上がります。  

本記事では、説得力のある事業計画書の書き方の3つのポイントについて詳しく紹介します。

事業計画書は事業者の優位性をアピールするべき

ハサミの拡大写真

事業計画書では、事業者の優位性をアピールすることが重要です。説得力のある事業計画書は、融資を受けられる可能性を高めるだけでなく、開業に際して協力をお願いしたい方への説得にも有効です。  

しっかりした開業動機や略歴をまとめておき、熱意や技術力、マネジメント力をアピールしましょう。

事業計画書を作成する前の準備

事業計画書で、事業者の優位性をアピールするためには、事前の準備が必須。事前の準備とは、事業者の美容師としてのキャリアについて整理することです。

まずは履歴書を書くつもりで、時系列に沿ってメモをしていきましょう。その際、○○美容室に何年間勤務したというだけでは情報不足です。

例えば、アシスタントからスタイリストに昇格した経緯、勤務先での売上達成率や指名客数、物販額などアピールできそうな事はすべて記載しましょう。  

紙などに書いて略歴を可視化すれば、自分のアピールポイントが明確になり、説得力のある事業計画書が作成できます。

事業者の開業に対する熱意と必然性

融資先が最初に知りたいと考えるのは、事業者の美容室開業の動機です。この動機には「開業に対する熱意」と、「開業には今がベストタイミング」だとする内容を盛り込みましょう。 

開業への熱意は、仕事に対する熱意として受け取られます。「この人ならば、熱量を持って経営を続けられるはず」と、融資先から思ってもらうことが重要です。

さらに、今が開業のタイミングとして最適だということをアピールできるのがベストです。 例えば、

  • 自分の顧客として、店が変わってもついてきてくれるお客様が一定数を超えた。
  • 美容師として○○年勤務し、目標とする成果を達成できた。
  • 独自で考案したサービスや商品をお客様に提供した。

といったような独立するための準備が万全で、今すぐにでも開業できる意志を提示しましょう。

また、競合の激しい美容業界で生き残っていけるという理由を、1つでも多く打ち出す事ができれば申し分ありません。

事業者の技術力とマネジメント力

美容室の事業者として求められるのは、確かな技術力と経営のためのマネジメント力です。事業計画書には、この2つの具体的な実績を記載しましょう。

事業者の技術力を示す具体例はこちらです。

  • 技術者としての経験年数
  • コンクールなどの表彰歴
  • 現在持っている指名客数
  • 講習会・勉強会の出席回数
  • リピート率・指名率

特に数字に基づいた情報は、美容師業界に明るくない方へも強い説得力を持ちます。誰もが納得できる実績を、細かく記載しましょう。

美容室を立ち上げる際には、技術者だけでなく経営者としての手腕も問われます。従って、店長やマネージャーとしての経験年数の記載も必須です。スタッフ教育での実績や、マネジメント関係の資格などがあれば、大きなアピールポイントになるでしょう。

美容室開業における資金調達方法のポイントは「堅実性」

美容師が女性の髪を切っているところ

金融機関にとっては、融資先の堅実性は重要視すべきところです。特に美容室は、お客様一人ひとりの売上を日々積み重ねていくことで成り立つ仕事です。美容室経営者の堅実性は「融資をすべきか」を判断する重要なポイントとなるでしょう。 

自己資金比率で堅実性をアピールする

融資先は、自己資金比率を堅実さの指標の一つとします。

例えば、1,000万円の借り入れを希望している場合に、自己資金を500万円用意している人と300万円の人では、前者の方が評価は高いでしょう。また、自己資金をコツコツ貯めて準備した人と、親族などから借りて準備した人とでは、同じ金額でも前者の方が評価されやすいです。

理想とする自己資金比率は、開業費用の3分の1程度とされていますが、実際には開業費用の4分の1を用意できれば借り入れできるというのが現状です。

また、自己資金額から借り入れ額を逆算し、調達できる開業資金を算出して、その金額に見合うお店を開業するのが「堅実性」の評価に繋がります。 資金に関しては、自分が独立したいと漠然と考えている時点から、何年もかけて着実に用意していくのが望ましいですね。

設備・運転資金の金額を正確に提示する

融資先は、事業計画書の設備・運転資金の金額が正確に記載されているかを審査します。「設備資金」は、以下のような費用に使われる資金です。

  • 店舗保証金|賃貸の契約保証金(家賃の数ヶ月分)
  • 外装・内装費|店舗デザイン、空調や照明、看板など 
  • 美容器具費|チェア、シャンプー台、鏡など

設備費は、不動産会社や内装業者、美容室器具のメーカーなどに見積もりを依頼すれば、比較的容易に算出できるでしょう。

反対に、算出するのが難しい反面、確実な数字の算出を求められるのが、開店後の「運転資金」です。運転資金の計算違いは、現金不足に直結するので、十分に余裕を持たせなければなりません。

運転資金には、以下のようなものがあげられます。

  • 運転準備金|人件費、家賃、光熱費などの固定費(売上がなくても発生)
  • 材料費|シャンプー・カラー・パーマなどの消耗品全般
  • 広告宣伝費|ホームページやチラシの作成費用など

運転準備金の金額は事業の見通しや経営と密接に関連します。時間をかけて検討するべきなのは、設備資金よりも運転資金と言えるでしょう。

資金調達方法に無理がないと判断できる

美容室を開業するための主な資金の借り入れ先はこちらです。 

  • 日本政策金融公庫|民間の金融機関を補完する役割を担う政府系の金融機関 
  • 制度融資|各自治体、信用保証協会、民間金融機関の連携によって行われる融資 
  • 銀行|都市銀行よりも地方銀行や信用金庫などの方が、融資を受けられる可能性が高い 
  • ビジネスローン|銀行やクレジットカード会社や消費者金融などで受けられる。審査が通りやすいが、金利が高いのがデメリット

美容室の開業資金の相場は、1,000万円前後とされています。自己資金などで、約3〜4割をまかなえるのが理想です。開業時の融資先は一ヶ所のほうが、資金調達方法に無理がないと評価され、審査が通りやすい傾向にあります。

美容室の事業の見通しは確かな数値計画がポイント

女性の髪をシャンプーしている写真

事業の見通しについて融資先に説明するときには、現実的な数字の裏付けが必要です。  

事業計画書に記載するのは、結論としての数値ですが、その数字になるまでの経緯を説明できなければ意味がありません。融資先との面談時に、経緯が分かる資料の提出を求められることもあります。

事業計画書の記入例(美容室)

日本政策金融公庫の創業(事業)計画書の記入例が参考になります。美容室用の創業(事業)計画書の見本は下記からダウンロードしてみてください。

美容室用の創業(事業)計画書の見本/出典:日本政策金融公庫

創業計画書の後半部分の「事業の見通し(月平均)」という項目の末尾にある「利益」は、融資先にとって資金回収と直結する最重要事項です。

融資先は、利益額の算出までの経緯に無理や誤りがないかを厳しくチェックします。

数値計画は時間をかけて練り上げること

事業計画書の中で融資先が特に注目するのは、事業の見通しの数値計画です。 

売上高に関する計画

事業の見通しで重要なのは、売上高に関する計画です。美容室における売上高とは「客数×客単価」によって算出されます。売上高を上げるための方法は以下の3つです。 

  • 客数を増やす
  • 単価を上げる
  • 両方を上げる

どの方法が自分の美容室に適しているのかは、立地条件・ターゲット層・集客方法・技術力・接客力などによって変わります。周りの美容室経営者や、顧客のターゲット層と想定される方に相談をするなどして、検討していく必要があるでしょう。

利益計画

利益が高いほど、経営がうまくいっているということになります。利益の計算方法は次の通りです。

  • 「売上高-売上原価(仕入高)-経費=利益」  

利益を見通す際に生かせるのは、美容師(店の責任者など)としての過去の経験です。

「あの条件の美容室では、こういう売上で利益はこうだった」などの実際の経験値があれば、これから開業する美容室が出せる利益を予想しやすいでしょう。

複数のシミュレーションをしてみる

事業の見通しでは、開業当初の利益と1年後の利益での、数字の比較を求められる場合が多いです。 

まず、1ヶ月間の売上高や売上原価、経費を想定します。これを月次シミュレーションといいます。  

次に、月次を基に年次シミュレーションをします。その際には、予定している指名客数、リピート客数などを加味しましょう。ブログやSNS、チラシなどで、どれほど集客できるのかといったシミュレーションの必要性もあります。

ここでも生かされるのは、事業者の経験と実績です。

事業計画書を記入する際は細かく具体的にアピール

ここまで、美容室開業時の事業計画書の書き方のポイントについて見てきました。

  • 開業動機・略歴|事業者の熱意・技術力・マネジメント力をアピールする 
  • 資金調達方法|事業者の堅実性と無理のない計画であることをアピールする 
  • 事業の見通し|経験や実績を基にしたリアルな数値計画であることをアピールする

以上の3点について検討することで、事業者の頭の中にだけ何となくあったお店のイメージを明確化・可視化できます。計画の長所・短所が見えてくるかもしれません。

融資先にアピールできる事業計画書を完成させることは、何も融資を受けるためだけのものではありません。綿密に練られた事業計画書は、失敗しない開業に繋がり、事業者にとっても有効なものです。 

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