独立開業して自分だけのお店を持つことは、美容師にとって大きな夢ではないでしょうか。しかし、残念ながら成功ばかりでなく、倒産・閉店といった失敗に終わる店舗も少なくありません。
そこで本記事では経営失敗の理由をはじめ、美容室の開業を失敗させないための対策や、失敗しないための下準備について詳しく紹介します。美容室を独立開業したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
せっかく美容室を開業したのに…経営が失敗してしまう理由とは?

美容室の店舗数は、年々増加しています。特に競争が激しい都心部などでは、独立開業しても失敗する可能性が高い傾向にあり、開業から1年以内で6割以上、3年以内では9割の美容室が閉店していると言われています。
美容室経営は難しいものだと理解し、美容室の経営に失敗してしまう理由をしっかりと把握しておくことが大切です。美容室経営を失敗してしまう理由として考えられるのは下記が多いです。
- 店舗を維持する資金が足りていない。
- 経営の知識が足りていない。
- 集客・広告費が残っていない 。
それでは一つひとつ紹介していきましょう。
1.店舗を維持する資金が足りていない
美容室の経営が失敗してしまう理由として、まずは「そもそも店舗を維持する資金が足りていない」という点が挙げられます。
美容室を開業する際に、土地の購入や店舗の外装・内装工事などに資金の大半を使ってしまい、オープン後には資金がほとんど手元に残っていない。そんな状況は、意外に多くあります。
たしかに立地や内装などハード面は美容室にとって大切な要素ですが、限りある予算の中で、開業後の運転資金とのバランスを取りながら計画しなければなりません。
開業する前に、必要となる固定費を確認しておきましょう。開業後に必要な資金は以下の通りです。
- 物件賃料
- 水道光熱費
- 消耗品費
- スタッフ人件費
スタッフ人件費は誰も雇用していない場合は発生しませんが、物件賃料などは売上高に関係なく必ず発生します。美容室開業時には、少なくとも3~6カ月くらいの固定費を手元に残しておきましょう。
ちなみに、独立してからの1年目は、9割が赤字になると言われています。事業計画書が1年目から黒字になっているなら、資金計画が間違っていると言わざるを得ません。いま一度、見直してみましょう。
2.経営の知識が足りていない
美容室の経営失敗の理由としてよく言われるのは、「経営の知識が足りていない」という点です。
現場の美容師としてのスキルと、お店を取り仕切る経営者に必要な能力は異なります。そのため経営の知識を身に付けずに独立すると、失敗に繋がってしまいやすいです。
経営者としての能力・スキルには以下のようなものがあります。
- 売上把握
- 経費
- 人材育成
- 顧客管理
- 集客
このような知識は、一朝一夕で身につくものではありません。自分で美容室を開業して独立することを決めたその日から、経営の勉強もしておくことをおすすめします。せっかく開業した美容室を失敗させないためにも、早期から経営についての知識を学びましょう。
3.集客・広告費が残っていない
開業の時点で集客・広告費が残っていないこともよくある失敗と言えます。どちらかというと軽く見られてしまいがちな集客・広告費ですが、実は開業時の売上に大きく関わる非常に重要な部分です。
無料で利用できるSNSなどを利用するのも効果的ですが、美容室掲載サイトへ掲載したり、地元で発行されているフリーペーパーに載せたり、チラシを配ったり、ホームページを作成したりするのには、やはり費用がかかります。
集客・広告費は、自分の美容室を一人でも多くの人に知ってもらうために大切な費用です。どれだけ腕の良い美容師が揃っていても、誰もその存在を知らなければ続けることができません。オープン時には、集客・広告費に回せる資金を十分に残しておきましょう。
美容室の経営を失敗させない対策

ここまで紹介した理由を考えた上で、美容室の経営を失敗させないために何をすればいいのでしょうか? ポイントは以下の3つです。
- 税理士と契約をする。
- ターゲットを選定し、物件を慎重に選ぶ。
- サービスの質の向上。
それでは一つひとつ紹介していきます。
1.税理士と契約をする
美容室の経営を失敗させないためにぜひ検討したいのが、税理士と契約をすることです。美容室の経営を失敗させないために、なぜ税理士と契約する必要があるのかと疑問に思う方もいるでしょう。
税理士と契約する理由は、経理関係の業務を税理士に任せ、自分は美容室の経営に専念するためです。
経営者の仕事には、以下のものがあります。
- 売上をつくること。
- お客様を呼ぶ仕組みを考えること。
- 再来店してもらう仕組みを作ること。
これらはとても大変かつ重要な業務です。特に今まで経営の経験がない方にとって、開業から店が軌道に乗るまでは、非常に大変な時期です。そんなときには、何もかも背負い込まず、自分の業務の負担をなるべく軽くする方法を積極的に考えましょう。
そういった理由から、給与や税金、保険や経費の計算などは、税理士に依頼すると美容室経営に一層集中できると思います。
美容師のサポートに特化した税理士と契約できれば、なお良いでしょう。美容業界について詳しい税理士なら、経営についての専門的で具体的なアドバイスを得られます。
税理士を雇うには費用がかかるので、資金が少ないときは二の足を踏んでしまいがちですが、メリットを踏まえたうえで税理士との契約を検討してみてください。
2.ターゲットを選定し、物件を慎重に選ぶ
美容室の経営を失敗させないためには、まず「どんなお客様に美容室を利用してもらうか」を考えることが必要です。
そして、ターゲット層を絞り込めばどんな物件を選ぶべきかも見えてきます。
ターゲットの選定
ターゲットとなる客層を考えるための、3つの変数はこちらです。
- 人口統計変数:お客様の年齢・性別・収入・家族構成などをもとに考える。
- 行動変数:お客様がいつ、どんなタイミングで店を利用するか考える。
- ライフスタイル変数:お客様の趣向・世界観・価値観などをもとに考える。
これは「セグメンテーション」というマーケティング戦略の一つです。このように顧客となるターゲットを絞り込むことで、お客様一人ひとりが満足できる美容室を目指すことができ、他の美容室との差別化を図れるでしょう。
具体例を一つ紹介します。
- 人口統計変数:30代・会社員・男性。
- 行動変数:電車通勤・会社帰りに髪を切りたい・手早くカットしてほしい。
- ライフスタイル変数:おしゃれすぎる内装は苦手・シンプルで気取らない内装を好む。
上記のようなお客様をターゲットとするとしたら、下記のような美容室が考えられます。
- 駅の近くなので会社帰りに寄れる。
- 平日の遅い時間まで営業している。
- シンプルで気取らない内装。
- 気軽に入りやすい入り口。
- カットに時間をかけない。
- 男性スタッフが多いほうが良い。
もし自分が顧客だとしたら、こんな美容室を利用したいと考えることが重要です。ターゲット層を設定しなければ、このように細かなお店の設定を考えるのは難しいはずです。
物件の選定
物件選びにおいて、ターゲット層として設定したお客様が来店しやすい場所を選ぶことが大切です。先に物件を決めたとしたら、その物件周辺の環境からターゲット層となるお客様のタイプを逆算してみましょう。
- オフィス街に開業:短時間でビジネスに適した髪型の提供。
- 大学に近い場所に開業:若者向けの髪型の提供。
また、物件選びでは想定するお客様、スタッフの数を考えた広さを考慮する必要があります。経営を続けていくうえでは、物件の賃料も重要なポイントです。
利便性が良く、多くの集客が見込めるならば、賃料の高い物件を選ぶのも良いでしょう。自動車で来店するお客様を見込みたいなら、駐車場を確保する必要もあります。さまざまな面を考慮して、物件は慎重に選んでください。
3.サービスの質の向上
サービスの質の向上は、美容室の経営において非常に重要です。お客様がしてもらって嬉しいサービスをいくつか紹介します。
- 飲み物やお菓子をサービスする。
- ひざ掛けを用意する。
- 腰当てクッションを用意する。
- マッサージを行う。
- 個室を用意する。
- ポイントカードをつくる。
- Webでも予約できるようにする。
施術後にお客様へアンケートを行い、現在行っているサービスがどのように受け止められているのかを確認するのもおすすめです。SNSやポータルサイトを活用してアンケートなどを集めてみましょう。運営側にはなかなか思いつかないサービスのヒントを、お客様がくれるかもしれません。
サービスの質の向上を心がけることで、客単価を上げることもでき、無理なく売上を上げられるでしょう。
開業前にできる!失敗しない美容室経営の下準備

開業前にやっておくことができる、美容室経営を失敗しないための下準備は以下のようなものがあります。
- 月ごとの収支シミュレーションをする。
- 流行の変化は、開業後にしかわからないことを把握する。
それでは1つひとつ紹介していきます。
1.月ごとの収支シミュレーションをする
美容室は毎月収入が変化するため、事前に月ごとの収支シミュレーションをしましょう。美容室はシーズンによっても収入が大きく変わります。
また、支出も毎月一定ではありません。収支を予測するのは簡単ではありませんが、現実的かつ綿密な収支シミュレーションを行うことが非常に重要です。
収支のシミュレーションを行っていれば、どの施術が1番利益率が高いのかも見極められます。一日に何人のお客様が来店すれば、美容室として経営が成り立つのかも分析できるでしょう。
それによって、「どのサービスにもっと力を入れるべきなのか」「スタッフを増員するべきなのか」などの判断がしやすくなります。
成り行き任せの無計画な経営では、店の現状が正しく把握できず、失敗してしまう確率が高くなってしまうので要注意です。
2.流行の変化は、開業後にしかわからないことを把握
「流行の変化は開業後にしかわからない」ということを把握しておきましょう。流行は時代とともに変化するため、事前にリサーチをしても開業後に変化してしまう可能性が高いです。
流行に関しては、開業してからも雑誌やSNSなどのインターネットなどを使って変化を追い続ける必要があります。特に若者がターゲットである場合は、その年の一般的な髪型の流行だけでなく、成人式や卒業式で好まれるヘアスタイルの傾向をチェックするのも重要です。
若者は流行に敏感なので、季節によるトレンドの変化なども見逃さないようにしましょう。
美容室の開業で失敗を防ぐには準備を怠らないこと
美容室の開業を失敗させないためには開業前にいかに準備しておくかが重要です。特に以下のことを事前に意識しましょう。
- 自分のお店のターゲット選定や物件選び。
- 経営の知識をつける。
- お金のことは税理士に任せ、自分は美容師としてのサービス向上に力を入れる。
美容室を開業してから、10年後も経営を続けているサロンは全体の5%しかいないといわれています。ほんのちょっとの失敗ですぐに蹴落とされてしまうほど美容業界は競争が激しくシビアな世界です。
しかし、経営の失敗には必ず原因があります。失敗の原因を事前に把握し、しっかりと下準備をしましょう。