美容室を経営するには、経費の考え方や税金について理解を深めておくことも大切です。なぜなら、経営をうまく軌道に乗せるためには、売上そして経費と税金の全てを管理しなければならないからです。
そこで、売上・経費・税金といった収入と支出のバランスを上手く保つことが大切になります。経費について「落とせるものと落とせないものがある」ということをご存じの方も、その基準が分からないという方は多いのではないでしょうか。
今回は美容室経営に必要な経費とは何か? また、節税や経費の削減方法について解説します。
目次
美容室における経費の内訳とは

経費とは、美容室の経営を行うために使用したお金のことです。確定申告で申請すれば、総収入から経費を差し引いた所得(事業所得)のみが課税対象になります。
経営にかかる費用を経費として計上できれば、かなりの税金対策になります。経費の種類は、大きく2つに分けられます。
- 固定費
- 変動費
「固定費」とは月や年単位であらかじめ決まっている支出のことで、「変動費」とは月や年単位によって変化する支出のことです。
固定費の内訳
家賃
美容室を運用するうえで必要な「店舗を借りるための費用」です。
人件費
経営者の報酬やスタッフに支払う給料です。社会保険料なども人件費に含まれます。
水道光熱費
水道代やガス代、電気代を指します。一般家庭では比較的変動の多い水道光熱費ですが、毎日お客様の髪を洗ったり、ドライヤーで乾かしたりする美容室では、ある程度予測ができるため固定費として扱われることが多いです。
通信費
店舗の固定電話代や携帯代、インターネットの費用です。近年はネット予約ができないと機会損失につながるため、必要な経費と言えるでしょう。
保険料
火災保険はもちろん、お客様に怪我を負わせた場合などに備えて保険には入っておきましょう。
月によって支出が異なる「変動費」の内訳
変動費は毎月一定額を支出する訳ではありません。しかし、ある程度の期間に渡り運営を続けることで、過去の支出から予測を立てることができます。
美容室にかかる変動費の例はこちらです。
材料費
施術の際に使用するシャンプーやヘアカラー剤、店内で販売する備品の費用になります。
消耗品
ハサミやクシ、ドライヤーなど購入価格が10万円以下の備品を指します。
旅費交通費
スキルアップセミナーや他店への視察など、業務に関わる行事に参加する際の移動にかかる交通費です。
雑費
銀行の振り込み手数料やゴミの処分料、店舗内のクリーニングを依頼するなどの費用になります。
修繕費
店舗内外の景観を維持するため、また内外装を一新する際にかかる費用や、壊れた備品の修理などにかかる費用のことです。
広告宣伝費
美容室を知ってもらうために近隣に配布するチラシや、インターネットに広告を載せる際にかかる費用です。
税金
売上をはじめ、納める税金にはさまざまな種類があります。詳しくは後述にて解説します。
経費になるか判断が難しい場合
自宅兼美容室では、家賃を全額経費にできないケースがあります。家賃が発生する場合でも、店舗が自宅を兼ねている美容室では、全額を経費にすることが難しいでしょう。
なぜなら店舗(自宅)は、仕事だけで使用する場所ではないからです。ただし、「家事按分」という制度により、仕事で使用する水道光熱費や通信費の割合を計算した上で、経費として一部を計上することができます。
また、衣服代は条件付きではありますが、経費にできる可能性があります。例えば仕事でしか着用しないエプロンなど、仕事上どの程度必要な衣服であるか、きちんと仕事で使う理由を主張できれば、経費として認められる可能性は十分にあります。
全額は難しいかもしれませんが、部分的にでも経費として計上したい場合は、税務署へ問い合わせてみると良いでしょう。「業務のための必要な経費であるかどうか」が重要なポイントです。
経費は税金にどう関わる?美容室経営における節税対策

美容室を運営するなかで支払う税金には「所得税」「住民税」「国民健康保険税」の3つがあります。開業から2年間は「消費税」に関しては免除になるため、どれだけ売上があっても税金がかかりません。
また、美容室を経営する個人事業主は、確定申告で税金の申告をする必要があります。確定申告の方法には、青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告
青色申告には、特別控除という優遇措置があります。特別控除には、65万円控除と10万円控除の2種類があり、65万円控除を受けたい場合に提出する帳簿は、少し複雑な「複式帳簿」になります。
美容室を開業しても、最初のうちは赤字になりやすいものです。そういう場合でも、青色申告なら、赤字になった翌年以降の3年間は「繰越控除」が受けられます。
他にも、専従者の給与には「経費控除」という制度があります。専従者とは、個人事業主と共に美容室を手伝っている夫婦や身内のことをいいます。
白色申告
白色申告には、青色申告にあるような特別控除がありません。その代わり、簡易帳簿という「自由な形式で入出金の記録がわかるもの」さえあれば、手軽に申告できます。
記入するのは売上や経費のみです。ただし、赤字になったときの救済措置がないので注意が必要です。
税金の種類について
上記以外にも美容室の経営に関わる税金が存在します。1つずつ解説していきます。
固定資産税
土地や建物にかかる税金です。店舗を賃貸ではなく自分で不動産を所有している場合は税金がかかります。
償却資産税
美容室の償却資産は、固定資産税の一部として税金がかかります。償却資産とはシャンプー洗面台やタオル蒸し器、受付カウンターなど、購入金額が10万円以上のものになります。
個人事業税
美容室経営は課税の対象になります。事業所得から事業主控除額(290万円)を引いた金額が課税対象です。
事業所得とは、総収入金額から必要経費を引いた金額です。
節税対策について
税金対策としてのおすすめは、前述の青色申告をすることです。なぜなら、特別控除が受けられるため節税対策になるからです。特別控除にも配偶者控除や社会保険控除、雑損控除など、さまざまな種類がありますので内容をしっかりと理解して活用すると良いでしょう。
また、経営上必要な費用は、経費としてしっかり計上しましょう。例えば、従業員へのボーナス支給や給料アップ、美容機器など設備を新調した場合も、経費として計上できます。
そして、スタッフミーティングでのお茶代、取引先へのお礼の品なども経費として申請可能です。設備機器は、購入費を経費として計上できますが、リース契約でもリース代を経費に計上できるので有効に活用しましょう。
美容室経営で経費削減する必要性とは?削減できる経費もご紹介

「利益=売上-経費」で計算されます。控除のことを考えると多い方が良いように思える経費ですが、利益を増やしたいと考えるなら経費削減も念頭に置く必要があります。利益を増やす施策として経費の削減にも取り組んでみましょう。
経費削減のメリット
経費を削減することにより、利益が増えます。長くお店を続けるほど、継続的な増収につながります。その分、広告や新規店舗を増やすなどの別の施策を行うことが可能になり、さらなる利益をもたらします。
また、利益が増えることにより、従業員の給料に還元することもできます。この好循環は、従業員のモチベーションを高める作用となり、業務品質の向上から顧客の満足度の向上につながることでしょう。
経費の削減方法
それでは、実際に経費削減するにはどうしたらいいのかを解説します。
材料費
美容室で使う材料には、カラー剤からパーマ剤など色々あります。そしてそういった材料は、高品質かつ高価格なものから、リーズナブルなものまで、実にさまざまです。
こだわりもあると思いますが、許せる範囲で材料の選択を見直すことにより、経費削減につながります。
紙代
紙代には顧客カルテや会員カード、雑誌などがあります。美容室の顧客が増えると、紙代も比例して増えていきます。紙代を減らすために、デジタルによるペーパーレス化を図るのも良い手だと思います。
デジタル機器を揃えるために、初期費用はそれなりにかかりますが、中長期を見据えればコストダウンにつながる可能性は高いです。
宣伝費
宣伝費を抑えるのも、経費削減の一つです。大手ポータルサイトの掲載費などは、決して安くないため「どうにかしたい」と考える経営者も多いと思います。
宣伝はInstagramなどのSNSを使えば無料で行うことができます。「ポータルサイトを使わないとWEB予約ができないのでは」と思われますが、WEBやアプリによる予約システムだけを取り扱うサービスも多くあり、ポータルサイトに掲載してもらうよりはずっと安く済みます。
大手ポータルサイトと比べると、どうしても最初は集客力が落ちますが、新規や既存顧客をWEB・アプリの予約システムに誘導し、次回以降は直接予約してもらうようにする手順を確立するのも一つの手です。
将来的にはポータルサイトに頼らずにWEBやアプリで完結できるようになれば、コストを大幅に減らすことができるでしょう。
電気代
美容室では消費電力の多い機材をたくさん使います。電気代を削減するために、電力管理システムを使うのも良い手段です。電気を無駄遣いしていないかどうかをチェックして経費削減に努めましょう。
美容室経営には経費や税金についてもしっかり理解しよう
美容室を経営するにあたり、経費とは何かということを理解することは肝要です。節税対策のためにも、かかった費用はしっかりと経費として計上しましょう。
経営をうまく軌道に乗せるためにも、収支に関係する経費や税金に精通することは大変重要です。