美容師として長年勤務をしていると、いずれは独立して自身の美容室を開業したいという気持ちになる方も多いと思います。そんな方は、「開業するには、どのくらいの資金が必要なのか」知りたいですよね。
この記事では、美容室を開業するために必要な資金・資格・美容室開業のための一連の準備と流れをご紹介します。
いずれ自分のお店を持ちたいと思っている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
開業するための費用と相場

開業するための費用を知ることで、自己資金だけで開業ができるのか、それとも融資や助成金を利用しないと開業できないのかが分かります。
美容室の開業資金は、店の規模や開業する場所によって金額が異なりますが、今回は平均的な相場を紹介していきましょう。
美容室開業には1,000万円程度必要
美容室を開業するために必要な資金は、日本政策金融公庫 総合研究所の「2019年度新規開業実態調査」のアンケート調査によると、1,000〜2,000万円が相場と言われています。
しかし、求人会社の情報によると、正社員として勤務をしている美容師の月収は平均26万円という結果が出ています。この結果からも分かるように、若いうちに1,000万円を自己資金で用意するのはかなり難しいと言えるでしょう。
そのような方でも、金融機関や日本政策金融公庫などの公的機関からの融資を得ることで、開業当初の自己資金を約1/4程度に抑えることが可能です。
美容室の開業資金の内訳
開業資金に必要とされる1,000万円の内訳とは、どのようなものなのでしょうか。詳細が分かれば、コスト削減も可能です。
美容室の開業資金の内訳は以下の通りです。
- テナント費用
- 内装工事費用
- 備品・設備費
- 広告宣伝費
- 運転資金
上記5点を1つずつ解説していきましょう。
テナント費用
美容室を開業するためには、テナントを借りるか更地に店舗を建築する必要があります。今回は、都内で店舗を借りた場合の費用を紹介していきます。
実際にTRNグループで理美容室を出店・開業された方の一例ですが、以下のような初期費用が発生します。
■麻布十番 3階12坪 の物件の場合
- 前家賃1ヶ月分・・・39万6,000円
- 敷金・・・198万~396万円(5~10ヶ月分)
- 礼金・・・39万6,000円(家賃1ヶ月分)
- 仲介手数料・・・39万6,000円(家賃1ヶ月分)
出店する立地・坪数によって金額は変動しますが、前家賃、敷金、礼金、仲介手数料などの初期費用が発生することは念頭に置いておきましょう。
なお、物件のご紹介はTRNグループでも得意としています。初出店で不安な方へのサポートも行いながらご紹介してまいりますので、お困りの方はぜひお気軽にご相談ください。
内装工事費用
テナントで美容室を開業する場合の内装工事費用には、開業費用の50%以上を要する場合があります。特に内装にこだわりを持ちたい方は、工事費用をしっかり確保しておく必要があります。
なるべく工事費用を抑えたい方には、「居抜き物件」がおすすめです。居抜き物件とは、以前美容室として営業していたテナントをそのまま利用するという形の物件です。既にある設備や内装を再利用できるため、ゼロから美容室を開業するよりも工事費用を抑えることができます。
居抜きではないまっさらな状態の「スケルトン物件」は、自由に内装工事ができるというメリットのある半面、工事費用は高くなってしまいます。単純に工事費用だけ考えると「居抜き物件」が圧倒的に有利と言えるでしょう。
備品・設備費
美容室に必要な備品例はこちらです。
- シャンプー
- トリートメント
- パーマ剤
- カラー剤
- スタイリング剤
- コーム
- タオル
- コットン など
上記のほかにも必要な備品がたくさんあります。最初のうちは、必要最低限のものを準備して、経営していく中で頻繁に使用するものを、メニューに合わせて徐々に増やしていくと良いでしょう。
続いて美容室に必要な設備例はこちらです。
- パソコン
- iPadなどのタブレット類
- ドライヤー
- 洗濯機
- 会計レジ
- 電話 など
最初から新品の専用機材を買い揃えることが難しい場合もありますよね。設備費の開業資金を抑えたい場合には、リース品やリサイクルショップなどを積極的に利用しましょう。
広告宣伝費
美容室を宣伝するためには、美容室のホームページを開設したり、折り込みチラシを作成したりします。しかし現在は、ホームページや折り込みチラシがなくても、インスタグラムやX(旧ツイッター)といったSNSを利用して宣伝を行う美容室もたくさんあります。
最初のうちは無料のSNSで顧客を集客していき、顧客がついたら本格的なホームページを開設しても良いですね。口コミが広がれば、新規顧客が獲得できるチャンスに繋がります。
運転資金
運転資金とは、家賃・光熱費・人件費などのことを言います。従業員を雇わない場合は人件費はかかりませんが、家賃などは月の来客が0人でも支払わなければなりません。
運転資金には、固定費の3〜6ヶ月分を準備しておくと安心です。新規の美容室を軌道に乗せるのは、思っているより時間がかかります。最初から目標としている利益を出せる美容室は、ごく稀だと考えておきましょう。
しっかりと運転資金を準備しておけば、精神的にも余裕をもった状態で、開店当初の不安定な経営を乗り切ることができるでしょう。
美容室開業までの一連の準備と流れをご紹介

1.開業するための必須資格を確認する
美容室を開業するために必要な資格は次の2つです。
- 美容師免許
- 管理美容師免許
自分1人だけで美容室を経営していくのであれば、美容師免許だけでも開業可能です。自分以外にスタイリストを1名以上雇う場合は、管理美容師免許の資格も取得する必要があります。
2.資金の調達をする
自己資金だけでは資金が足りない場合、銀行や金融機関から融資を受けましょう。融資を受ける場合にはしっかりした事業計画書を作成し、審査を通さなければなりません。
また、補助金や助成金を受けるのも有効な手段ですが、これらは融資と違い後払いであるということを覚えておきましょう。助成金や補助金については下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
3.コンセプトを考える
美容室を開業すると決めたら、まずは美容室のコンセプトを考えることが重要です。どういった美容室を経営したいのか。「ファミリー向け」「大人の女性向け」「学生向け」など、コンセプトはさまざまです。
「どんな方にも来てもらいたい」と、万人受けする店をつくりたいと思う方も多いと思います。しかし、万人受けする店をつくるのは、どこに焦点を当てて良いか判断しづらく、かえって難しいものです。それよりも、ターゲットを絞り込んだほうが、内装やサービスなどの方向性が定まりやすくなります。
ターゲット層を細かく分析し、顧客がまた来たいと思うような美容室をつくることができれば、一定の固定客がついて、継続的に安定した営業を目指せるでしょう。
4.出店場所を決めて、物件を申し込む
美容室の立地場所は売り上げに大きく影響します。コンセプトがしっかりと決まっていれば、どんな場所に店舗を出店すべきかがおのずと見えてくるのではないでしょうか。
例えば、20代30代の若年層向けの美容室の場合であれば、商業施設の近隣や人が集まりやすい立地を選ぶと良いでしょう。ファミリー向けなら住宅街の近くを選ぶのも良いですね。
出店場所は、まず複数の場所を候補にして入念に選びましょう。見た目や周りの雰囲気だけでなく、インフラの状態などをチェックすることも忘れてはいけません。
5.内装工事をする
出店場所が決まったら、いよいよ内装工事に取り掛かります。内装工事をする際の業者選びのポイントは、美容室の内装工事実績が豊富な会社に依頼するのが良いです。
美容室の内装工事は、他の店舗や住宅などと違い特殊な面を持ち合わせています。慣れた会社に依頼することで、打ち合わせや工事がスムーズに進み、理想的な美容室ができ上がるでしょう。
6.備品の購入・広告宣伝
内装工事が無事に終わったら、美容室で使用する備品の購入や開業後の広告宣伝をどのようにしていくかなどを従業員にも相談してみましょう。
自分だけの意見ではなくて、従業員に相談することで視野も広がり職場の雰囲気も良くなります。
7.その他の手続き
美容室の開業手続きを提出する以外にも、以下のような手続きがあります。
- 賠償保険に加入
- 保健所の営業許可を得る
- 消防署へ届け出を出す
上記の3つは、とても大切な手続きです。賠償保険に加入をすることで、お客様とのトラブルにも備えられます。保健所と消防署への申請も必ず行いましょう。
1人美容室の開業時に使える助成金のご紹介

美容室を開業する場合に、補助金や助成金があれば利用したいと思う方も多いのではないでしょうか。
美容室を開業する際に使える補助金には「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」があります。
また、助成金には「トライアル雇用助成金」「人材確保等支援助成金」があります。
補助金や助成金の申請方法については、まずはご自身が住んでいる自治体に相談すると良いでしょう。自治体によっては、独自の補助金や助成金を用意している場合もあります。
しかし、融資と違い補助金や助成金は後払いなので、開業資金としては使えません。開業資金は助成金や補助金を別と考えた、最低限の自己資金が必要です。
美容室開業で使える助成金について詳しく知りたい方はぜひこちらの記事もお読みください。
美容室の開業でも事前の準備は入念に
今回は、美容室を開業すると決めてから準備の段階を経て、開業に至るまでの一連の流れをご紹介しました。
美容師として独立するためには、開業するための資金調達やコンセプト決定といったさまざまな準備が必要となるので、最低でも1年前くらいから開業の準備をしていくと良いですね。
開業するための自己資金が足りない場合には、銀行や金融機関での融資を考えましょう。また、融資以外にも、国の補助金や助成金を積極的に利用することをおすすめします。まずは、どのような美容室にしたいかコンセプトを考えることから計画していきましょう。