美容室の改装は大きく分けると2つのパターンがあります。 居抜き物件と呼ばれる元々美容室(理容室)だった物件を利用する方法と、美容室として使われていなかったスケルトン物件を利用する方法です。
この記事ではそれぞれの物件のメリット・デメリットや、美容室や理容室を改装するにあたっての注意点についてお話します。
目次
美容室改装の物件タイプごとの費用相場やメリット・デメリットを紹介

こちらでは、「居抜き物件」「スケルトン物件」それぞれの物件の特徴や、坪単価の平均数値、メリット・デメリットをご紹介します。それぞれの物件タイプの利便性や注意点についてもお伝えしますので、物件選びの判断材料としてご活用ください。
居抜き物件とは
居抜き物件とは、以前の使用者の設備がそのまま残っている状態で、その内装を譲り受ける物件になります。
居抜き物件の坪単価は、12〜20万円程度が平均的な相場となっています。
居抜き物件のメリット・デメリット
メリット
- 費用の削減が可能。
- 既存の内装がそのまま活用できる。
- 工期が早く終わる。
デメリット
- 自由に内装を決めることが難しい。
- 設備に不良があった場合は自己責任になる。
居抜き物件の最大のメリットは、改装にかかる費用を大幅に抑えられることです。エアコンなどの空調設備や、シャンプー台やトイレなどの水道設備が残っていれば設置費用を削減できます。また、前の店舗内装を部分的に引き継ぐことも可能です。
ただし、不要になった設備の撤去費用は自身が負担する必要があるため、耐用年数には注意が必要です。また、立地や集客面で問題がないかどうかをしっかりと検証する必要もあります。
参考記事:居抜き物件とは? 新規出店に活用するメリット・デメリットと注意点を解説
スケルトン物件とは
スケルトン物件とは、以前使用されていた設備などが一切残されていない物件であり、原状回復(入居した時点と同じ状態に戻す)が完了している物件のことです。
スケルトン物件の坪単価は、25〜50万円が平均的な相場とされており、居抜き物件よりも割高となっています。
スケルトン物件のメリット・デメリット
メリット
- 既存の内装の撤去費用が掛からない。
- 自由なデザインの内装に仕上げることができる。
デメリット
- 内装(改装)工事に掛かる費用が大きくなる。
- 居抜き物件よりも工期が長くなる。
スケルトン物件の場合、物件に何もない状態からのスタートになります。美容室の改装工事で最も資金が必要となる、水道工事や電気・空調などの設備関連すべてを一から設置しなくてはならないため、改装工事に掛かる費用が高額になりがちです。
ただ、考え方によってはすべてをゼロの状態から作り出せるため、理想の店舗づくりがしやすくなっています。
参考記事:スケルトン物件とは?居抜き物件との違いやメリット・デメリットを解説
美容室の改装をする際の注意点

美容室・理容室の改装は、お店のコンセプトや方向性、メインとするターゲット、事業内容に則して行われるため注意が必要です。
内装デザインで意識しておくべきこと
美容室の改装で重要なことは、どのようなお客様を想定しているのか、訪れる客層をどのように意識しているかです。
美容師として自身が得意としている技術やスタイルを生かすことはもちろんのこと、店舗を構える予定の立地や、近くに同業の店舗があるのかを確かめる必要があります。同業店舗がある場合は、どのようなコンセプト・方向性で経営しているのかを確認するといったことも重要です。そうすることで、さまざまな方向からの視点を持ち、お店の方向性選びをすることで内装やデザインを決める際に迷うことが少なくなります。
おおまかではありますが、コンセプト・方向性を考慮した内装デザインについて、2つの具体例を紹介するので、参考にしてみてください。
ターゲットが「学生」の場合
ターゲットを「学生」とした場合は、可愛い雑貨を集めたり明るめのものを中心とした配色にして、若い子が気軽に入りやすく、おしゃれで可愛らしい感じの雰囲気を演出した内装にするのがおすすめです。
ターゲットが「大人」の場合
「大人」をターゲットとした場合は、ウッドデザインのカフェのような雰囲気や、大理石調の床に黒やブラウンの家具を並べてラグジュアリーな雰囲気を出すなど、落ち着きや高級感を感じさせるような内装にするのがおすすめです。
これらのデザイン・コンセプトはあくまでも一例なのですが、完成後のイメージやコンセプトを明確にした状態で物件を探す・選ぶようにすると、内装に対して資金を多く回せるようになります。
ただ、デザイン重視にするだけでなく安全性にも考慮し、撥水性の高い床材を使用するといった配慮も必要になります。
設備配置・スペース設置時の注意点
さまざまな設備やスペースが必要な美容室。設備配置において気をつけるべき点についていくつかお伝えします。
美容室にはいろいろなスペースが必要
カットを行うメインスペースに加え、シャンプー台や待合室にレジ、従業員の控室などといったスペースが必要となります。
間仕切りの撤去などが必要な場合あり
物件の間取りや、自身がイメージする設備を配置するスペースを確保するために、間仕切り壁を撤去するといった工事が必要になる場合があります。
スムーズな動線づくりを意識する
内装を考える際には動線を意識することも重要です。さまざまな線やスペースが混在する美容室では、お客様と美容師が行きかうことも多いため、危険の回避やストレスを感じさせないようスムーズな動線づくりを意識しましょう。
必要に応じた設備のリフォームを
美容室ではシャンプーの度に大量の水やお湯を使用するため、口径の大きい給水管と排水管が必須となります。そのため物件選びの際には、配管工事の必要性や、配管工事を行っても良いかの確認が必要です。
また、シャンプー用のお湯を出す給湯器や照明、ドライヤー、パーマ用のエアウェーブなどを同時に使用しても耐えられる電気容量も確保する必要があります。
美容室の改装費用を安く抑える方法とは

美容室の内装工事を安く抑えたい場合に考慮すべき点は3つあります。1つずつ順番にお話をしていきます。
内見時に現場調査をしておく
美容室では電気や水道を大量に使用するので、必要な設備容量を確保する必要があります。容量が不足している場合は、追加するための工事が必要となり、場合によっては何百万単位の金額が発生する場合もあります。そうならないよう前もって必要な設備容量を把握しておき、物件選びの際の条件に加えるなどの対策が重要です。
さらに、配管の場所によって効率の良い間取りというものがあり、床を上げる面積を減らしたり、配管材料を減らしたりといった考慮ができるよう、事前に配管の状況を調べておくことも重要です。
また、施工のしやすさも無駄な費用を減らす観点としては非常に重要です。床を水平にしたり、有害物質を除去したりといった工程が必要になるとその分だけ費用が上乗せされます。そうならないために、しっかりと内見をして物件の状態を把握する、どのような素材を使用しているのか確認するなどの対策が必要です。
素材や造作物についての打ち合わせは確実に行う
表面に見える素材を調整することで、掛かる費用を抑えることは可能です。例えば、床に貼るタイルの素材を磁器タイルから塩ビタイルに変更するだけで費用は大幅に下がります。しかしこの場合、磁器タイルはメンテナンスフリーですが、塩ビタイルの場合は定期的なワックスがけが必要といった難点があります。初期費用とランニングコストのバランスの見極めが非常に重要です。
家具に関してもオリジナル品を作ると費用が高くなるため、既製品を使用することで費用を抑えることが可能です。セット台やシャンプー棚などが内装費用に含まれている場合、メーカーの既製品を使用すると安くなることがほとんどです。
打ち合わせから工事完了までの時間に余裕を持つ
お店の完成までに、内装業者と決めていくことは多岐に渡ります。1回の打ち合わせですべてが決まるということはなく、段階を追って決めていく必要があります。慌てて決めた場合と、ゆっくり熟考を重ねた上で決めていくのとではクオリティに明確な差が生まれます。
美容室の開業に重要なのは、無駄な費用を抑えることだけでなく、最適な案のすり合わせをしっかりと行える期間を設けることです。つまり、時間に余裕を持って打ち合わせし、納得のいく内装工事を進められるかが要になります。
美容室・理容室の内装工事は自分に合ったタイプを選択しましょう
美容室を改装する場合の物件のタイプには2つのタイプがあり、それぞれのメリット・デメリットの他に坪単価にも大きく差があります。
美容室を改装する際には、コンセプト・ターゲットを明確にした上で内装デザインを詰めていくことが重要です。
美容室の改装費用を安く抑えるためには「内見時に現場調査をする」「素材や造作物についての打ち合わせをしっかりする」「打ち合わせから完了までの納期に余裕を持つ」といったポイントを押さえておくことが重要です。
自分自身が思い描く理想となるデザインを実現できるよう、費用をかける部分・かけない部分をしっかりと見定められるようにしましょう。