美容室を開業するには、保健所への立ち入り検査が必要です。しかし、衛生面や作業室の面積など細かな基準が設けられているので、検査が上手くいくかと不安な方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、保健所への検査の流れと審査に落ちないためのポイントについて紹介します。これから美容室を開業しようと考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね!
目次
保健所への検査の流れ

美容室を開業するには、保健所への検査が必要です。保健所への検査の流れは以下の通りです。
- 事前相談
- 保健所に開業届を提出
- 立ち入り検査が入る
- 認可される
流れに沿って1つずつ解説していきます。
1.事前相談
まずは、「構造設備が基準に満たしているのか」について、保健所へ事前相談を行う必要があります。
構造設備の基準は照明の明るさ、セット面の椅子の数、換気窓の大きさなど様々な条件がありますが、条件を満たしていないとそもそも開業自体がNGとなってしまうので、必ず事前相談は行いましょう。
さらに、内装後に保健所から改善要請が出てしまうと新たに工事費用が掛かってしまう可能性がありますので、工事開始前に内装図面を用意し、事前に保健所へ相談しに行く事をおすすめします。
また、審査の基準は地域によって規定が異なります。必要書類なども異なりますので、開業予定の管轄の保健所へ行き事前に詳細を確認をしましょう。
2.保健所に開業届を提出
事前相談を終え内装工事を終えたら、保健所に開業届を提出します。開業届を提出する際に必要な書類は以下の通りです。
- 開業届
- 構造設備の概要
- 施設の平面図
- 従業員名簿
- 医師の診断書
- 検査手数料2万円前後
書類の数が多いので、抜け漏れがないか事前によく確認しておきましょう。
3.保健所の立ち入り検査が入る
書類を提出した後に日程が決まり、それから立ち入り検査が始まります。立ち入り検査では保健所職員が直々に開設予定の店舗へやってきて検査が行われます。検査当日は開設者の立ち合いが求められるので注意してくださいね。
立ち入り検査で見られるポイントは以下の通りです。
- 作業室の面積と椅子の台数
- 床の素材
- 待合スペースとの区画
- 消毒設備の保管場所
- 換気設備の構造 など
店舗の設備面で上記のような点をチェックし、これから開業する美容室が衛生管理体制に問題がないかどうかを確認していきます。美容室では、身体の一部である「髪」を扱います。そのため、衛生管理体制はとても重要。しっかりと確認しておくようにしましょう。
検査に合格すると、許可が下り開業することができます。確認済証が発行されるので、保健所から連絡が合ったら取りに行きましょう。
保健所検査に落ちないポイント

ここでは保健所検査に落ちないポイントを紹介していきます。もし検査に落ちても再度検査を受けることもできます。しかし、再び受けるのには時間がかかり、追加工事も必要になるかもしれません。
そのため、1回で確実に合格できるよう、基準やどのようなポイントを意識するのかを把握しておきましょう。構造上のポイントと衛生設備のポイントをそれぞれ解説していきます。
構造設備のポイント
構造設備の基準は、保健所によって変わってきます。しかし、おおまかなポイントは以下の9点です。
- 構造設備、作業所面積が13㎡以上であること。
- 作業椅子は13㎡で6台までとし、1台追加するごとに面積を3㎡以上増やす。
- 作業所内に作業用以外の椅子は置かないこと。
- 作業所と待合所を明確に区別し、作業中の客以外がみだりに立ち入れないようにすること(ついたてや簡単に移動できない棚、観葉植物などでもよい)。
- 床材や腰板には、清掃や消毒がしやすいようにコンクリートやタイル、塩化ビニールなどの不浸透性材料を使用すること(畳やカーペットは不可)。
- シャンプー台を設け、周囲の壁や床にはコンクリートやタイル、塩化ビニールなどの不浸透性材料を使用すること。
- 作業面の照明は100ルクス以上にすること(1畳あたり10ワット目安)。
- 十分な換気設備があること(作業所内の1L中の炭酸ガス量を5,000ppm以下に保つ)。
- 十分な数量の器具及び客用の布片を備えるための容器や戸棚などを備えること。
開業する段階ではなく、すでに店舗を決める段階で、美容室として保健所の基準を満たしておく必要があります。追加工事をしないためにも、事前に工事業者や保健所に相談しながら美容室のデザイン設計を行うようにしましょう。
衛生設備のポイント
美容室は、お客様の肌に直接触る事も多い職場です。そのため、お客様の命に関わる衛生管理については「美容師法」などによって厳しく定められています。しっかりと行き届いた衛生管理を行えるように、設備面のポイントは以下の5点です。
- 衛生設備、手や器具を洗浄するための洗い場として水道設備があること(シャンプー台とは別に水道設備が必要)。
- トイレを設ける場合は専用の手洗い設備を設けること。
- 消毒済物品や未消毒物品を分けて格納するための密閉式容器や戸棚などを備えること。
- 蓋付き毛髪箱と蓋付き汚物箱を備えること。
- 万が一のケガに備えて、応急薬品とガーゼなどの衛生材料を備えること。
衛生管理に関してはかなり重要な検査ポイントになっているので、消毒方法についても重点的に確認しておくようにしましょう。
保健所審査を実施する時の注意点

美容師が働く上で最も重要となる法律といえば「美容師法」です。保健所は美容室を開業する前だけでなく開業した後でも抜き打ち検査を行います。この抜き打ち検査によって「美容師法」を守っていないと分かってしまった場合には、罰金や営業停止などが適用されるため、大きな痛手となります。そのため、開業する前にどのような事に注意するべきかを知っておきましょう。保健所で審査する時の注意点は以下のようなものがあります。
- 管理美容師が必要。
- 飲み物を提供するときのカップ。
- 美容師免許を持っていない方は、ハサミにも触れてはいけない。
それでは一つひとつ紹介します。
注意点1:管理美容師が必要
常に美容師が2人以上いる美容室では、管理美容師の資格が必要です。管理美容師がいない状態で2人以上で営業していた場合、30万円の罰金や営業停止が課される可能性があるので気をつけましょう。
開業の際に従業員を雇う予定はなくとも、いざ開業してしまうと従業員が必要となるケースも少なくありません。後々開業するつもりがあれば、なるべく早い段階で管理美容師の資格を取っておくことをおすすめします。開業後に従業員を雇ったら管理美容師の資格が必要になるので、それを見越して今のうちに取得しておきましょう。
管理美容師の資格には、美容師免許の取得後に3年以上の実務経験があること、並びに管理美容師講習会の参加と修了が必要です。
注意点2:飲み物を提供するときのカップ
お客様に飲み物を提供する際、カップに注いだ状態で提供するのは衛生的な観点からNGとなっています。衛生面や法律を守るためにも、缶やペットボトルなどの封がしてあるのもので提供するようにしましょう。
注意点3:美容師免許を持ってない方は、ハサミにも触れてはいけない
美容師免許を持っていない方は、カットやカラーはもちろんのこと、お客様に直接触れるハサミを持つことすら許されていません。無免許者はそもそもお客様に触れることができないことは大前提です。
無免許のアシスタントが行うことを許されているのは、掃除や洗濯、電話対応などの雑務のみです。保健所はもちろんお客様から信用してもらえるような美容室であるためにも、しっかりと「美容師法」は守るようにしましょう。
事前にポイントをしっかりおさえて保健所の立ち入り検査を確実に

美容室を開業する際に、美容室の構造や設備状況を確認するためにも保健所の立ち入り審査は必ず必要になってきます。
その際には
- 営業時と同様の消毒作業の実演を求められる。
- 保健所担当者からの質問もされる。
といったように、とっさの質問をされることも考えられますので、店舗物件を決める前や、内装工事に入る前の段階で、構造設備基準をしっかりと把握しておくようにしましょう。
また、今回紹介した保健所への検査の流れを把握することも大切です。事前に必要な書類などを用意しておくことでスムーズに美容室を開業することができるのでおすすめします。