美容室の開業には費用がかかりますが、全額現金で用意できる人は多くありません。ほとんどの方は開業資金の一部として、国や自治体に補助金・助成金を申請します。しかし、申請方法が複雑だったり、揃える書類が多かったりして面倒だと思っている方も多いでしょう。
そこで今回は、美容室の開業をスムーズに行うための、美容室の開業資金に使える助成金や補助金の申請方法を併せて解説します。ぜひ最後までお読みください。
※いずれも2023年12月時点の情報です。最新の申請方法や申請期間などは厚生労働省や各自治体などのホームページをご確認ください。
目次
助成金と補助金の違い

よく聞く言葉に助成金と補助金がありますが、違いを理解している方は少ないでしょう。ここでは、まず補助金と助成金の違いについての基礎知識を解説していきます。
助成金とは
助成金とは、雇用促進や職場環境の改善などの活動を支援するために給付されるお金で、融資と違い返済が不要です。助成金は労働者の職を安定させることを目的としており、「事業の存続が難しい」「休業を余儀なくされている」などの場合に活用されます。
厚生労働省が管轄しており、要件を満たせば受給できる可能性が高いのが特徴で、審査に通りやすい分、支給される金額は少額になります。人気の高い助成金はすぐ締め切られてしまうこともあるので、助成金の申請を希望している場合は早めの申請がおすすめです。
補助金とは
補助金とは、事業の拡大や設備投資などを支援するために給付されるお金で、助成金同様に返済は不要です。補助金は、特定の産業の育成と発展、地方創生を目的としていており、経済産業省、または地方自治体が管轄しています。補助金は税金でまかなわれているため、毎年予算が異なります。その分、審査も厳しく給付される金額も高くなりますが、申請すれば必ず支給されるというものではありません。審査に通るためには、申請書類の内容が重要となってきます。
美容室・理容室の開業に使える助成金

次に美容室の開業に利用できる助成金を3つご紹介していきます。また、申請方法も併せてご覧ください。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用とは、ハローワークや人材派遣会社等の紹介により対象の求職者を原則3ヵ月間試験雇用し、その後企業と求職者双方が合意すれば本採用が決まる制度のことで、職業経験、技能、知識不足による就職が困難な求職者(職種未経験者)を試験的に雇用した際に支給されます。
対象者の要件
- 紹介日の前日より過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している。
- 紹介日時点で離職期間が1年を超えている。
- 妊娠・出産・育児を理由に離職し、紹介日時点で安定した職に就いていない期間が1年を超えている。
- 紹介日時点で45歳未満の未就労者。
- 紹介日時点で、特別な就職援助を要している。
例)生活保護受給者、母子・父子家庭の父母、日雇い労働者、季節労働者、ホームレス、中国残留邦人等永住帰国者、障がい者、生活困窮者。
事業主の条件
さらに、申請する事業主も以下の要件を満たしている必要があります。
- 1週間あたりの所定労働時間が30時間以上であること。
日雇い労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者を雇用した場合は、20時間以上の所定労働時間が必要。 - 一定期間解雇したことのない事業主であること。
支給額
対象者一人当たり、月額最大4万円が3ヵ月支給されます。対象者が母子・父子家庭の父母だった場合は月額5万円が3ヵ月支給されます。
トライアル雇用助成金は、トライアル雇用の決定から2週間以内に「トライアル雇用実施計画書」を最寄りのハローワークに提出する必要があります。この計画書は雇用対象者にも確認してもらい、同意を得たうえで提出しなければなりません。助成金の申請はトライアル雇用の終了から2ヵ月が期限となっているので早めの申請をおすすめします。
▶トライアル雇用助成金の申請様式のダウンロードはこちら(厚生労働省)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金は、勤続5年以内の契約社員やパート従業員などの非正規雇用の労働者を正社員にキャリアアップした際に支給される助成金です。支給金額は一人当たり57万円と高額です。
申請要件
- 対象者が事業主の3親等以内の親族でないこと。
- 対象者が3年以内に事業主に別会社などで雇用、業務委託で業務をしていないこと
- 有期雇用契約を6か月以上行っていること。
- 正社員転換を行い、新しく契約書を交わしていること。
- キャリアアップ前後の6か月間で、3%以上の昇給をさせていること。
- 正社員として6か月以上給与を支給していること。
キャリアアップ助成金は最寄りの労務局、またはハローワークにて申請が可能です。
▶キャリアアップ助成金の申請様式はこちらからダウンロードはこちら(厚生労働省)
人材開発支援助成金(キャリア形成支援制度導入コース)
人材開発支援助成金は、労働者のキャリア形成を目的としており、雇用する労働者に対して業務に関連した専門的な知識や技術を習得させるために、訓練や研修を計画に沿って実施した場合に支給されます。助成金を受給するためには以下の制度を活用する必要があります。
- セルフ・キャリアドック制度
対象の労働者に、ジョブカードを使ったキャリアコンサルティングを定期的に実施させる。
- 教育訓練休暇制度
教育訓練、各種検定、キャリアコンサルティングなどを受けるために別途休暇を与える。
この2つの制度を休業規則に規定しておく必要がありますが、この2つの制度を両方導入した場合、60万円が助成されます。制度を導入しなかった場合は47.5万円が助成されます。この助成金は事業所単位での助成となるので注意してください。教育訓練休暇制度を規定した就業規則などを作成後、教育訓練休暇等実施計画書を作成し労務局へ提出し、承認されれば助成金が支給されます。
▶人材開発支援助成金(キャリア形成支援制度導入コース)の申請様式のダウンロードはこちら
美容室・理容室の開業に使える補助金

続いて、美容室の開業に役立つ補助金を3つご紹介します。よろしくお願いいたします。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員数5名以下の事業者に支給される補助金です。販路拡大に関する取り組みに対して補助され、美容室の場合はシャンプー台の新設などが対象です。補助金額の上限は100万円となっています。年度によって申請期間が異なるので、経済産業省のホームページを定期的にチェックし、公募が始まったら申請を開始できるようにしておきましょう。申請は各自治体の商工会議所で行います。
▶商工会議所の小規模事業者持続化補助金のホームページはこちらをチェック
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、事業拡大のための活動に対して支給される補助金です。新メニューの開発などが対象になります。補助金額の上限は1,000万円と高額ですが、審査が厳しいので補助金がおりる確率は低いでしょう。こちらもインターネット上での申請が可能です。
▶ものづくり補助金の申請様式のダウンロードはこちらから
よろず支援を使って申請を進める

助成金や補助金の申請は一人では難しく、社労士などの専門家に依頼するのが一般的です。しかし、依頼には別途費用が掛かるため予算を抑えたい事業主には、「よろず支援」をおすすめしています。
よろず支援とは、各都道府県に拠点を置いており、起業に関わる業務や事業計画のヒアリングなどを無料で行っている団体です。相談やヒアリングは何度でも無料で行えるので、助成金や補助金の申請をスムーズに行いたい場合は積極的に利用しましょう。
▶よろず支援のホームページはこちら
自治体の制度を積極的に利用して開業準備をしよう
美容室の開業には多額の費用が必要となり、そのための資金集めも重要です。助成金や補助金の活用は必須となってきます。しかし申請には多くの必要書類が必要だったり期限があったりするので大変な労力となります。一つひとつの助成金や補助金の制度を理解し、自治体の支援もしっかり活用していくことで、理想的な美容室の開業に繋がるでしょう。