コラム
保育士の仕事は大変?働く上での苦悩や、やりがいを感じる瞬間を紹介します


「保育士を目指したいけど、仕事が大変そう」
などと不安に思っている方は多いのではないでしょうか?
事実、保育士は日常の中でたくさんの業務を行いますし、職員同士や保護者とも綿密にコミュニケーションを取らなければいけない大変な仕事です。
しかしその分保育士は、子供の成長を感じたときやチームで何かを達成したとき、
感じられるやりがいや喜びも大きい素晴らしい仕事です。
・保育士をこれから目指すうえで、何が大変なのかを知りたい。
・保育士のやりがいを再確認したい。
という方に向けて今回は、保育士の仕事において大変なことや、だからこそ感じられるやりがいを紹介して行きたいと思います。
目次
保育士の役割
保育士の役割は、園児たちのお世話をしながら、子供たちが集団生活の中で生きていけるように食事や睡眠、排泄、衣類の着脱など、生活の中で基本となる習慣を身につけさせていくことです。
精神的にも身体的にも、子供の成長に深く関わることから、保育士の仕事は子供を発達させる上で非常に大事な役割だと言えます。
保育士は子供だけでなく、保護者とも綿密に関わって行きます。
保育園で起きた出来事や子供の成長を、保育園に預ける保護者に対して細かく共有することも非常に大切な役割です。そうすることで、保育園の場だけでなく自宅でも生活の習慣を身につけるきっかけを作ってあげる事ができます。
年齢や性別、さまざまな人と関わりながら多くの仕事量をこなすことから、保育士の仕事に「チームワーク」は必要不可欠です。職員同士が密にコミュニケーションを取らなければ、保育士の役割を果たすことはできません。そういった意味で保育士は「コミュニケーションの仕事」と言い換える事もできます。
そんな責任重大の保育士の仕事にはどのような大変さがあるのでしょうか?
保育士の大変さ
ここからは、保育士が実際の業務の中で大変さを感じる瞬間を、具体例を交えて紹介していきます。
職場の人間関係によるいざこざ
女性が多い保育士の現場において、人間関係は大きな悩みの一つです。
平成30年に東京都が行った「東京都保育士実態調査結果」によると、
保育士が仕事を辞めた理由、第一位が「職場の人間関係」でした。
もちろん人間関係の悩みは保育士の職場に限ったことではありません。
ですが、女性が多い保育士という現場だからこそ発生してしまう問題も多数あります。
実際の現場では下記のような事が発生しています。
・表面上だけの仲の良さ
・当人がいないところでの陰口
・派閥の形成・陰湿ないじめ
・上司同士仲が悪く、間を取り持つ新人保育士
・園長先生や先輩保育士からのパワハラ
・周りの同僚に対する過剰な気遣い
・感情の起伏が激しい同僚
・意見が言えない
・保育方針が合わない
などが保育園の中で起きています。
保育士として働いたことがある方なら、このうちのどれか一つは経験があるのではないでしょうか。
人間関係の悩みは明確な解決策がある訳ではなく、ストレスが溜まってしまいやすいのが特徴です。園の雰囲気や、職員同士の関係性が悪い保育園で、毎日の業務をこなしていくのはとても大変なことです。
このように職場の人間関係が複雑になってしまうのには理由があります。
実は保育園というのは、園長、副園長、主任以外役職がありません。
それ以外の保育士は基本的に横並びの関係にあります。
一見、役職がなく横並びなのであれば問題は起きなさそうにも思えますが、実際の現場では経験年数や能力によって厳しい上下関係が築かれています。
明確に立場やポストで決まっている上下関係では無いので、現場には破ってはいけない「暗黙のルール」が多数存在しています。
そのルールを知らぬ間に破ってしまった保育士は、陰で悪口を言われたり、クスクスと陰で笑われたりなど、もはやいじめのような行為にあってしまいます。
こういった曖昧なルールが複雑な人間関係を生み出し、保育士の仕事をより大変にさせるのです。
もしあなたが職場の人間関係で悩んでいるのであれば、下記のコラムが参考になります。
保護者のクレーム対応
保育士として避けては通れないのが保護者対応です。
もちろん、保護者との良好な関係を築けることも多いですが、近年、保護者からのクレームはエスカレートしており、理不尽な要望も多くなってきています。
また、保育園に子供を預けている保護者は仕事などで多忙な方が多いです。
送迎の際にもコミュニケーションが取れない、連絡帳も読んでくれていない、面談日を設けようとしても「仕事だから」と断られてしまう。こういった事が続いてしまっては保育士としてもコミュニケーションを取る事ができません。
日頃から良好な関係が築けていれば、問題が起きたときもお互い冷静に対処する事ができるでしょう。ですが、関係性が築けていない場合、保護者対応を間違えるとさらに騒ぎが大きくなってしまう可能性があります。
保護者に対して、理不尽だと感じても謝るのは保育士です。こういったクレーム対応を大変に感じている保育士は非常に多いです。
労働時間が長く、生活リズムが崩れてしまう
保育士は労働時間が長く、生活リズムが崩れてしまう事があります。
多くの保育園では、シフト制を導入しています。
シフト制の保育士の勤務時間は、全国保育協議会の調査によると、開始時間は平均「7時台」、終了時間は平均「19時台」の施設が最も多い結果になりました。
平均にすると約11.7時間もの間、保育園は空いており、多くの保育士は働いています。
これらの数値を踏まえると、早番・中番・遅番は以下のような時間帯になります。
・早番:7:00~16:00
・中番:8:00~17:00 (9:00~18:00)
・遅番:10:00~19:00
シフト制勤務では3交代制を採用しているところが多いですが、近年は様々なシーンに対応するために4~7交代制というところもあるようです。
こういった保育園では、保育士同士でバランスを取りながらシフトが組まれています。
独身で時間的には融通がきく保育士、子育てをしているため中番しか入れない保育士、パートとして働くため夜遅くまでは厳しい保育士などが協力し合いシフトを組みます。
ですが、比較的シフトに融通のきく独身の保育士などは子育てをしている保育士やパート保育士の家庭事情に合わせて、勤務時間が変更になる事が多いため、出勤時間がバラバラになってしまいます。
前日が遅番で、次の日は早番などになってしまうと、休憩の時間が取れず体調を崩してしまう、なんてことも多いです。
実際の保育の現場では緊急の仕事、保護者対応などが入る事があり、1時間以上の休憩を取れている保育園は非常に少ないのが実態です。
朝から休憩も無しに働き、家に帰ってはサービス残業、それでは生活リズムを崩してしまい、保育士を辞めたくなってしまうのも無理はありません。こういった労働時間の長さや、出勤時間のばらつきも、保育士業務を大変にさせる理由の一つです。
求められるスキルが多い
保育士は業務量も多いですが、それに伴い求められるスキルも非常に多いです。
保育現場で求められる代表的なスキル例は以下の3つです。
コミュニケーション能力
保育士には高いコミュニケーション能力が必要です。
なぜなら、保育士が良好な人間関係を築く必要があるのは子供だけでは無いからです。
保護者や上司はもちろんですが、近隣の地域住民の方々とのコミュニケーションも必須になってきます。
保護者の送迎マナーが悪かったり、子供達の遊び声がうるさいことで、地域住民の方々とトラブルになることが多々あります。
そういった際に、日常からしっかりとコミュニケーションを取っておくと、小さな火種で済ませる事ができるのです。
さらにここで覚えておきたいのが、人と話すことだけがコミュニケーション能力では無いということです。見落とされがちですが、連絡帳や書面などの文章を作成し、伝えることもコミュニケーション能力の一つです。
子供の成長や頑張ったことなどのポジティブな内容だけでなく、喧嘩して相手を傷つけてしまった事や、その上でご家庭で取り組んで欲しい課題など、誤解を生まないように伝えなければいけないこともあります。
そういった意味で保育士は、言葉を巧みに操る事ができなければできない仕事だという事ができます。
健康管理能力
この力は、自分のためにも周りのためにも絶対に磨いておかなければいけない能力です。
体調がおかしいと感じたら、すぐに薬を飲んだり休んだりするなどの対処が必要です。しかし、それ以上に体調を崩さない努力が保育士には必要です。
バランスの良い健康な食事を摂り、十分な睡眠をとる。
自分自身の心の健康も考え、趣味を持つなどして適度に息を抜くことが保育士の日常には求められます。保育士が管理しなければいけないのは、自分の健康だけではありません。
もし子供が「食欲がない」「いつまでも泣いている」など様子がおかしいことがあれば、原因を考えて、適切な処置をしてあげなければいけません。
自分に対しても、他人に対しても健康管理能力は、保育士に必要不可欠なスキルです。
論理的思考・行動力
何か問題が起きた際に、その解決策を論理的に考え行動に移せる事が保育士にとっては重要な能力になります。
仕事ができない保育士は、頭の中がまとまっておらず、何が言いたいのかもわからないような人が多い傾向にあります。それは、物事を分解し、順序立てて組み立てていく論理的思考能力が無いせいです。
仕事ができる保育士は、この能力があるため行動に無駄がなく、容量が良いのでたくさんの業務をこなす事ができます。上司に対しての相談でも、何を聞きたいのか?質問の背景が明確なため、上司も的確なアドバイスがしやすいです。
論理的思は業務の中で徐々に身についていく能力です。そのため、日常から論理的に考える癖をつけることが、保育士には求められています。
その他にも、事務作業、人前で話す、子供の話を聞く傾聴力、必ずではないですがピアノスキルも必要になります。
保育士が大変と感じるのは、保育士1人に対して現場で求められることが多いことも理由の一つとして挙げられるでしょう。
ピアノが苦手だなと感じる方は、別のコラムでピアノを上達する方法について記載をしています。
労力が給料に見合わない
令和元年、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均月収は全国平均で24万4500円となっています。そこに年2回のボーナスを含めると、保育士の平均年収は363万4600円となっています。
20代の平均月収は約22.5万円ほど、30代の保育士さんと比較すると約2万円、40代の保育士さんとでは約3万円ほどの差が生じます。
厚生労働省の発表では、大卒の初任給は約20万円なので、他職種と比べても20代のうちはそれほど差がないことがわかります。
一番年収が高くなるのは50代の411.9万円。
この年代では役職にも就き、任される責任も大きくなることから年収が最大になります。
保育士は働く年数を重ねるごとに月収やボーナスが上がっていく仕組みです。
現場での保育経験を積み、できることが増えるのと同時に給料も増えていきます。
昇給は非常に緩やかな傾向にあり、
20代で22.5万円だった月収が、30代ではわずか2万円ほどしか上昇を見せていません。
入社する年齢や時期にもよりますが、約10年かけてわずか2万円の上昇ではモチベーションも下がってしまいますよね。
仕事内容と給料が見合わないと感じストレスを抱えてしまう保育士さんが多いのは、この給料の上昇の緩やかさにあると言えるでしょう。
もし今の職場での給料アップや転職をしての給料アップを狙うのには下記のコラムを参考にしてみてください。
保育士のやりがい
前章では保育士が大変だと感じる瞬間、その理由を具体的に見てきました。
保育士は大変な仕事です。しかしそのやりがいは日常の至る所に感じる事ができます。
ここでは、保育士の仕事を通して感じることができるやりがいや魅力を3つの観点から紹介します。
職員同士で感じるやりがい
行事やイベントが成功したとき
入園式や運動会、卒園式などのシーズンは、保育士の腕の見せ所です。
日常的な業務に加えて、準備や計画をする機会が増えるためとても大変ですが、その分チームで達成した時の喜びは計り知れません。
みんなで一つの目標に向けて頑張ったり、トラブルを共に乗り越えていくことで職員間の間に信頼が生まれ、やりがいを感じる事ができます。
同僚に仕事を任された時・褒められた時
・自分の企画が面白く、同僚に褒められた
・大きな行事の司会を任せてもらえた
・先回りして仕事を終わらしておいたら、上司に褒められた
やりがいというのは日常の積み重ねの中から生まれるものです。
一つ一つは小さなものですが、周りに認めてもらえると「また頑張ろう!」と次の意欲につながっていきます。
また、自分自身が褒められるのを待つだけでなく、いい仕事をしている人を見かけたら
「ありがとう!助かります!」
「あの企画はとても面白かった!」
などと自分から声をかけていくことでも、やりがいを作っていく事ができます。
保護者が感じさせてくれるやりがい
保護者から感謝される
保護者から感謝されるのも、保育士のやりがいの一つです。
保護者にとって保育士は自分以外で、自分の子供を成長させてくれる唯一無二の存在です。
保護者の方は育児のプロではありません。子供と成長していく中で、子供と一緒に育児を学んでいきます。そういった意味で保護者にとって保育士は「育児の相談相手」でもあるのです。
保護者の方と関係性を築いていくことは一朝一夕ではできないことです。
ですが、日常の中で子ども一人ひとりと真剣に向き合っていれば、保護者の方はその姿勢に必ず気づいてくれます。
お家での子供の成長を感じ、「あなたに担任の先生になってもらえて本当によかった」と言ってもらえるケースもたくさんあります。
人に感謝される喜びを感じると、保育士という仕事にやりがいを感じますよね。
保育士は社会貢献にも繋がっている
現在日本では共働きが世間一般に広まってきており、必ずしも保護者が子供の面倒を見れるとは限らない世の中です。社会的にも待機児童が増えてきており、これからますます問題は深刻化していくとみられています。
保育士という仕事は、そんな共働きの家庭を助けることが出来ます。
近年、保育士が不足していることからも、これから保育士の需要は高まり給料も上がっていく可能性があります。
社会的に価値がある保育士という仕事は、非常にやりがいを感じることができる仕事だということができます。
子供が与えてくれるやりがい
子供の成長に感動
子供の成長を肌で感じることができるのは、保育士の特権です。
子供は日常の中でたくさんのことを感じ、自分で気づき、そして成長していきます。
・苦手だった逆上がりができるようになった
・折り紙が上手に折れるようになった
・歌が前よりも上手に歌えるようになった
など、保育業務の中ではたくさんの感動に出会うことができます。
特に行事やイベントがある保育園では、日常以上の感動に出会うことができます。
子供たちが一つの目標に向けて懸命に努力する姿には、心を動かされる保育士も少なくないはずです。
保育士は子供の成長を感じ、一緒に成長していくことができる素晴らしい仕事だということができます。
子供からのプレゼント
子供が好き!という気持ちから保育士を始めた方は非常に多いです。
そのため、子供と一緒に遊んだり、絵を描いたりする時間はやりがいを感じる事ができます。
また、日常の中で子供からお手紙やプレゼントをもらう事があります。
そのプレゼントから、子供の成長を感じる事ができますし、何よりも自分を思ってお手紙やプレゼントを作っている姿を想像すると、とても感動的ですよね。
保育士は日常の中で小さな喜びに、たくさん出会う事ができる仕事なのです。
保育士が大変だな、と感じたら
ここまで保育士は大変だが、その分やりがいもある素晴らしい仕事だという話をしてきました。
ですが、人には必ず向き不向きがあります。自分が向いていないと感じているのにもかかわらず、同じ職場で働き続けるのはとても苦しい事ですよね。
では保育士として働く中で、大変さを感じた際はどのような対処を取るべきなのでしょうか?
ここでは最後に3つの対処法を紹介したいと思います。
・誰かに相談する
・趣味で気分転換をする
・転職も視野に入れる
誰かに相談する
ストレスを感じた際に最も重要なのは、1人で抱え込まず誰かに相談することです。
厚生労働省が平成28年に実施した「労働安全衛生調査」によると、悩みを誰かに相談することで、9割以上の方が解消、または気持ちが楽になったと回答しています。
家族、恋人、友人、相談する相手は誰でも構いません。
信頼できる人に今感じている不安や悩みを率直に伝えてみましょう。
誰かに聞いてもらうことで気持ちが軽くなったり、解決策が見つかることがあります。
他人の客観的な意見をもらい、しっかりと事実を受け止めて「対話」することで心の状態もきっと良い方向に向かうはずです。
身近な人に相談しづらい場合は、公的機関の相談窓口やカウンセリングを受けることも視野に入れてみましょう。
趣味で気分転換をする
休日に何もすることがなければ、日常のネガティブなことばかりを考えて憂鬱になってしまいますよね。そんな中で週が明けてしまっては、仕事に集中できません。
「昔は趣味があったけど、最近は何もできていないな」
と少しでも感じているのであれば、仕事を休んで趣味に没頭してみましょう。ここでのポイントは何も考えず趣味に打ち込む、ということです。そうすることで大きなストレス解消になります。
趣味に没頭することが難しければ、ヒーリングミュージック(海の音や焚き火の音)を聞いてゆったりとリラックスできる時間を少なからず持つようにするだけでも効果があります。
転職も視野に入れる
「色々なストレス解消法を試したけど、あまり効果がない。もう限界、、、」
そう感じた場合は、現在の職場が合っていないのかもしれません。
どれほど努力しても上手くいかない時は、自分ではなく保育園側になんらかの問題がある可能性が高いです。
環境が変われば、いきいきと働くことができるかもしれません。
思い切って転職を考えてみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
保育士は業務量も多く、責任もあるため大変な仕事ではありますが、
他人から感謝される非常にやりがいのある仕事です。
これから保育士として働く方も、現状保育士として働いている方も、自分なりの保育士のやりがいを見つけてみてください。
やりがいを見出すために働けば、気持ちがポジティブになり仕事も楽しくなるはずです。
この記事が皆さんの保育士人生をサポートすることに繋がっていけば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。